Tetsu-to-Hagane
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Reaction Behavior in Packed Bed Considering Bed Structure and Reaction Properties of Particles
Ryo ShibasakiShungo NatsuiTatsuya KonShigeru UedaRyo InoueTatsuro Ariyama
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2013 Volume 99 Issue 6 Pages 391-400

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Synopsis:

To decrease the reducing agent ratio in the blast furnace, various measures such as mixed charging are being pursued. Coke mixed charging is considered to improve permeability in the cohesive zone and the reducing behavior of ore particles. Conventionally, these researches were frequently carried out with a small packed bed. However, the information obtained by these experiments was based on a macroscopic analysis. In the present research, a DEM-CFD model developed by the authors was applied to precisely analyze reaction behavior under various packed bed structures, such as that with coke mixing. Moreover, the effect of high reactivity coke on the reduction rate of ore was examined using this model. According to the results, coke mixed charging has little influence on the reduction rate. When high reactivity coke was charged to the ore layer, the particle temperature decreased due to the endothermic reaction by high reactivity coke. Accordingly, the reduction rate of the ore particles was suppressed as a result of the temperature change. This phenomenon was relatively noticeable in the packed bed structure with high reactivity coke set up in the lower part.

1. 緒言

製銑プロセスにおける低炭素化の実現に向け,コークス,鉱石粒子の近接配置,および高反応性コークス装入などによって高炉内のガス利用率の向上を図る研究が活発に進められている。具体策として,鉱石層へのコークス混合装入1,2,3)や高反応性炭材であるフェロコークスの利用4,5,6,7)が提案されている。コークス混合装入は,鉱石層内にコークス粒子を配置することによって,還元ガスの交換を促進し,また融着層内での通気性改善に効果があるとされている。粉鉱石と石炭から構成された圧粉体の乾留物であるフェロコークスは,内装された金属鉄の触媒効果により通常のコークスよりも著しく高い反応性を示し,その使用時には高炉の熱保存帯温度が低下し,ガスの利用率が向上することが報告され6,7),特に鉱石層内へのフェロコークス装入が有効とされている5,8)

以上の研究はコークス,鉱石粒子の配置を意図的に変更し,還元ガスの利用を活発にすることを期待しているが,コークス,鉱石粒子の最適な配置など,具体的な充填構造についての知見は少ない。Yokoyamaらは充填層を用いて,鉱石,コークス,フェロコークス粒子などの配置を変更し,ガス利用率,還元率との関係を実験的に検討し,フェロコークスの最適配置について比較検討を行っている8)。これらの小型充填層の実験によって,層構造の変更に伴う還元率,ガス利用率の変化などマクロ的な把握は可能であるが,局所的な反応挙動変化などの把握は難しい。

近年,固体粒子間の接触などの相互作用にDiscrete Element Method(DEM)を適用した解析が,現象の理解において有用な成果をあげ,UedaらがReviewとして総括している9)。また,至近の計算機能力の向上に伴って,流体運動を連続的に離散化する差分法(または有限体積法)とのカップリングによるDEM-CFDシミュレーションが実高炉スケールに応用できるようになった10,11)。DEMでは個々の粒子の運動解析が可能であり,さらにその粒子毎に熱・物質移動を連結することにより,粒子スケールを温度分布,反応率解析の最小単位とすることができる。混合装入などに伴う局所的な粒子スケールの伝熱,反応挙動の把握が可能となり,充填層内の精緻な反応挙動解析に展開できる。これらの概念に基づき,著者らはDEM-CFDモデルに充填層内の粒子配置を任意に設定,考慮できる新たなモデルの提案を行っている12)。前報では粒子単位の熱物質移動現象に対する解析手法を提案し,高炉内への適用可能性を示した12)。本報では,上記の背景から,コークス混合装入を設定,あるいは高反応性コークスを充填層内に配置した小型充填層を対象に反応変化の解析を行った。小型充填層実験は層構造などを意図的に設定可能であり有用なツールになるが,得られる情報がマクロ的なものに限られる。上記のモデル計算では,粒子単位の熱移動,反応変化の情報を元に,詳細な充填構造の総合的検討が可能となる。このような意図から,本研究では今後の実験との連成を考慮してラボスケールの小型充填層を対象とし,様々な充填構造,反応性の異なるコークス粒子を充填した充填層内の反応挙動を解析した。

2. 数値解析手法

2・1 モデルの構成

本モデルで考慮した充填層内の移動現象の要素モデルをFig.1に示す。a)は対象領域での計算ユニットセル内での粒子-粒子の運動量交換,b)は流体の運動量収支,あるいは粒子-気相の運動量交換,c)は充填層要素の熱移動,d)は物質量の移動を表す。これらのユニットセルから構成される基礎方程式をFig.2に示すような計算フローで前報と同様に解いた12)。各粒子の配置,個々の粒子の温度,反応率,気相の流れ,温度場の計算を繰り返し,充填層内全体の計算を行った。詳細は前報と同様である12)

Fig. 1.

 Schematic representation of unit model. a) Particle-particle momentum transfer. b) Fixed volume element for fluid momentum transfer. c) Heat transfer. d) Particle-fluid mass transfer.

Fig. 2.

 Calculation flow.

2・2 運動方程式

2・2・1 DEMによる粒子運動基礎方程式

気相中にある単一の球形粒子運動は,粒子間接触力および粒子−流体間相互作用力を考慮して,次の並進および回転方向の運動方程式で与えられる。   

  

ここで,mpは粒子質量,vpは粒子速度,tは時間,Fcは粒子間接触力,Ncは接触粒子数,Fdは粒子−流体間相互作用力,Fgは重力,Ipは粒子慣性モーメント,ωpは粒子角速度,rpは粒子半径,Fcsは剪断方向接触力,Frは回転抵抗力である。粒子間接触力は,Heltzの弾性接触理論に基づく“soft sphere model”を適用して表現した13)。せん断方向の応力には回転抵抗14)を導入し,粒子の形状を表現した。

2・2・2 流体の運動

粒子群中の流体の運動は,粒子−流体間相互作用を考慮して,Reynolds応力の影響を無視すれば15),非圧縮性の連続の式,Navier-Stokes式で与えられる。   

  

ここで,εは空隙率,ρgは流体密度,ugは流体(ガス)線速度,pgは流体圧力,μgは流体粘性係数,Fbは浮力である。

粒子−流体間相互作用力Ffは,粒子と流体の相対速度から与えられる16)。   

βtは固気間運動量交換係数であり,空隙率εによってErgunの式17)またはWen-Yuの式18)を適用して求めた。また,流体抗力係数CDは,粒子Reynolds数の関数とした。

2・3 伝熱に関する基礎方程式

2・3・1 粒子間の伝熱

気相流中にある単一粒子の伝熱に関して,固−気間対流伝熱,粒子間接触伝熱,輻射伝熱の3つを考慮した。さらに,粒子の化学反応による熱生成を考慮して,粒子に関する次の伝熱に関する方程式が得られる。   

ここで,Cp,pは定圧比熱容量,Tpは粒子温度,Qreacは反応熱量,Qcondは粒子間伝熱量,Qconvは粒子−流体間伝熱量,Qradは輻射伝熱量であり,前報と同一の導出を行った12)。また,壁は断熱系として扱った。粒子の反応熱はすべて粒子側に与えた。

2・3・2 流体の熱収支

粒子群中の流体の伝熱は,粒子−流体間相互作用を考慮して,温度の時間変化(非定常項),強制対流による伝熱(移流項),熱の拡散(拡散項),粒子−流体間伝熱と反応(非線形項)から成るエネルギー保存則で与えられ,以下に示される。   

ここで,Cp,gは定圧比熱容量,Tgは流体温度,Qpは固気間交換熱量で単位体積内に存在する粒子の流体による対流による伝熱量と反応熱から求められる。

2・4 物質輸送方程式

2・4・1 固相の物質輸送

固相の物質輸送方程式は,粒子運動を粒子と一緒に動くLagrange座標で表現し,組成iの化学反応による生成または消失を考慮して,以下のように表される。   

ここで,ψs,iは固相組成iの質量分率,Ss,iは固相組成iの生成速度である。系に存在し得る固相組成は,Fe2O3,Fe3O4,FeO,Fe,C,Al2O3,SiO2,CaO,MgOの9種類とした。

2・4・2 気相の物質輸送

気相の物質輸送方程式は,流体運動を空間に静止した観測点を基準に表現し,組成iの移流,拡散,生成または消失を考慮して,以下のように表される。   

ここで,ψg,iは気相組成iの質量分率,Γg,iは気相組成iの混合気体内拡散係数,Sg,iは気相組成iの生成速度である。気相組成はCO,CO2,N2の3種類とした。

2・5 化学反応速度

2・5・1 コークスのソルーションロス反応速度

コークスのソルーションロス反応は不均一触媒反応モデルにより記述した。すなわち,反応物である気相分子Bのモル濃度CBに比例して,以下のように表される。   

ここで,kmは総括反応速度係数であり,化学反応と境膜物質移動の複合律速であるとし,次式で求めた。   

kdは境膜物質移動係数,kc,lは化学反応lの化学反応速度係数,ηeは触媒有効係数である。物質移動係数kdの求め方は,前報と同様である12)。ソリューションロスの化学反応速度の記述方法としては,触媒反応機構モデルを用い,粒子表面に吸着された分子同士の反応であるLangmuir-Hinshelwood機構型の化学反応速度とし,Kobayashi and Omoriの反応速度定数19)を用いた。   

式中のk1,2k2,2k3.2は以下の速度定数で表される。   

  
  

高反応性コークスについては,Nogamiら,Yamamotoらの研究を参考に,次式を用いた5,20)。   

2・5・2 鉱石の反応速度

鉱石粒子の反応は,酸化鉄の気相による還元反応のみを考え,多界面未反応核モデル22)を適用した。多界面モデルの速度関数al,jを適用すれば,各反応式の反応速度は以下のように表される。   

ここで,mは適用する多界面未反応核モデルの界面数で,速度定数al,jはHaraらの式を用いた21)。COによる鉄酸化物の還元反応の平衡定数Ke,l,化学反応速度係数kc,l,有効拡散係数De,lは,Takahashiらの値を用いた22)

2・5・3 輸送物性

混合気体の移流・伝熱・拡散方程式に含まれる物性値ρgμgλgΓg,iに関して,ρgは理想気体の状態方程式から求めた。他の物性値は,各気相分子iの値をChapman-Enskogの式23)から求め,混合気体の値を分子運動論に基づく式24,25)により推算した。

粒子の物性は,固相組成によって変化する。鉱石粒子の密度は,鉄化合物の総括還元率から還元された酸素質量分を減少させ,コークス密度は反応率に応じて与えた。コークス粒子,鉱石粒子は共に粒子径は変化せず初期粒径を保持させ,すべて実粒子径を採用した。

3. 計算方法および計算条件

3・1 計算対象

充填層構造および計算領域をFig.3に示す。固定層の小型充填層実験装置を想定した870mm×Φ65mmの円筒形容器に粒子を充填した。粒子は鉱石,コークス,あるいは,高反応性コークスの3種類とし,粒子径は全て10mmΦである。DEM計算によって円筒の上部より粒子を落下させ,堆積した粒子により目的に応じた充填層を構成した。混合装入の計算では,予め計算した充填層の各粒子に乱数発生でランダムに鉱石,コークス粒子の特性付けを行い,均一な混合層を設定した。よって,密度差による偏析は生じていない。Fig.3の計算格子に示されるように円筒の3次元モデルであり,通常の還元実験と同じく固定層とした。

Fig. 3.

 Calculation grid of packed bed.

3・2 計算条件

今回の計算は高反応性コークスなど原料性状の特徴が現れる高炉熱保存帯付近の反応挙動に着目し,鉱石粒子の初期状態をFeOとした。一般のラボ実験では周囲のヒーターによって壁温を所定温度に保つように制御するが,実際の高炉では固気間の熱移動,反応熱の授受の結果としてガス,粒子温度は決まる。本研究ではガス流入温度を一定とし,反応熱の影響などをより高炉に近い条件でシミュレートさせ,反応熱の影響を敏感に反映させるために,装置壁面は断熱系とした。初期の固体粒子の温度は1373Kとし,計算の開始とともに充填層下部より1373Kのガスを流入させる。流入するガスは高炉熱保存帯下部からの流入ガス条件を考慮し,ガス組成をCO:CO2:N2=33:5:62とした。圧力は常圧である。入り口ガス実流速,ガス流量は各々1.0m/s,0.659Nl/sである。計算に用いたDEM,CFD,固相物性,気相物性の条件をTable 1に示す。

Table 1. Calculation conditions.

4. 混合装入時の解析結果

4・1 充填層構造の設定

鉱石層内へのコークス混合装入の影響を解析するためにFig.4の充填構造を設定した。充填層下部より鉱石,コークス,鉱石の層をそれぞれ330mm,210mm,330mmの厚さに層状装入したa)を基準条件とした。O/Cは6.3となる。次にコークス層の半分を鉱石層粒子と混合した50%混合条件のb),コークス層のすべてを混合層とした100%混合のc)を設定した。b)の混合層内では体積比率でコークス粒子,鉱石粒子が各々24%,76%,c)では,各々,39%,61%の混合比となる。なお,最下層は入り口ガス温度に拘束され,反応熱などの影響が表れにくい。よって,入り口ガス温度の影響を緩和するダミーの層として鉱石層を設置した。これは以降の充填層構造に共通である。

Fig. 4.

 Packed bed structure of DEM-CFD simulation.

4・2 コークス混合装入時の反応挙動

Fig.5にモデルより導出されたa),b),c)の3条件における充填層内の温度分布を示す。いずれも半裁の中心断面に位置する粒子温度から構成される。a)の場合,初期温度,計算開始後1800秒後,3600秒後の温度変化も示す。粒子温度初期値は1373Kであるが,FeOの還元反応は発熱であり,時間経過と共に還元が進行し,その発熱効果で気流と共に熱が徐々に上方に移動し,上方ほど温度が上昇するのがわかる。3600秒後には上部では1400K以上に達する。1800秒から3600秒では中間のコークス層以下の領域の温度は低下傾向にある。コークスのガス化反応励起によって温度上昇が抑制され,1800秒以降では熱伝導によって低下したためと推察される。3600秒後ではa)b)c)の温度分布に大きな差はない。混合装入のb)では,コークスのガス化と焼結鉱の還元が混合層内で同時進行するために,鉱石の還元による発熱効果がやや緩和される。

Fig. 5.

 Temperature distribution of particles in packed bed.

Fig.6に3600秒後の鉱石の還元率を示す。本図は鉱石粒子のみを示し,b)c)ではコークス粒子を除いた表示である。壁側の外周粒子の還元率が中心部に比べ高い。壁効果で壁近傍の空隙率が高くなり,壁流が強くなったためと推察される。いずれの場合も鉱石層,混合層の下部に赤色で示される相対的に高い還元率を持つ粒子が観察されるが,大きな差はない。充填層内の鉱石の平均還元率の時間経過をFig.7に示す。本図では最下層の鉱石層は除外した。固定層の計算であり,時間経過と共にa)b)c)の還元率は上昇し,3600秒付近でわずかであるが一定の傾向が現れる。よって,以降の温度,反応の比較は3600秒後のものとした。

Fig. 6.

 Distribution of reduction degree of ore particles at t=3600s.

Fig. 7.

 Relationship between time and average reduction degree of ore particles in packed bed.

Fig.8はコークス粒子の反応率分布を示す。Fig.6と同様に,壁流の影響が観察されるが,各ケースの違いは観察されない。Fig.9に同一時間における充填層内の軸方向のCOガス濃度変化,特定位置における断面のCOガス濃度を示す。本図からも壁流の影響が観察される。Fig.9から,層状装入から下方に混合装入を拡張するにつれて,上部鉱石粒子が下方に移り,本図のカラースケールの青で示される低CO領域が下方に拡大するのがわかる。しかし,コークス混合装入によってCOガスが再生し,それが還元促進に繋がる効果は観察されない。本計算条件ではコークス混合による鉱石還元の促進など近接配置効果は見られない。また,装置内径に比較して粒子径が大きい充填層では壁流の影響が無視できない。本モデルではDEM計算によって自然状態の充填を模しており,実験装置でも同様な事象が考えられる。

Fig. 8.

 Distribution of gasification rate of coke particles.

Fig. 9.

 Distributions of CO gas concentration in the gas phase.

4・3 高反応性コークス混合装入の影響

Fig.4~9の結果から,熱保存帯のようにガス,固体の温度が近接している場合,反応熱の影響によって充填層温度分布は変化する。高反応性コークス使用時には,コークス粒子の活発なガス化吸熱反応によって温度変化は大きくなることが予測される。高反応性コークス使用の影響を見るために,Fig.4のc)のコークス粒子を高反応性コークスに置換した条件を設定した。

Fig.10は通常コークスと比較した場合の層内粒子温度の計算結果である。高反応性コークスの反応速度は上述のようにNogamiら,Yamamotoらの値を参考にした5,9)。1373K付近では通常コークスの約10倍の反応速度となる。高反応性コークスを使用したFig.10のb)では,通常コークス使用のa)と比較して,ガス流入温度の1373Kから上方に向け徐々に温度は低下し,上部は1330Kにまで低下傾向にある。すなわち,高反応性コークス使用時には,コークスガス化が活発化し,鉱石の還元反応熱以上に層内温度に大きく影響する。Fig.11は鉱石粒子の還元率分布を示す。b)の高反応性コークスを混合した場合には,青色で示される低い還元率粒子が目立ち,全体の還元率は低下している。混合層下部では顕著ではないが,上方ほど還元の進行は遅くなる。同図の下に観察対象とした層内の鉱石平均還元率を示す。b)の場合,還元率は低い。Fig.10の温度分布からわかるように,高反応性コークス使用によって層内温度は低下し,鉱石還元はその影響を受ける。Fig.12はコークス反応率を示す。b)の場合にはコークスガス化率は高い。よって,高反応性コークス使用によってコークスガス化率は上昇するが,その吸熱反応によって層内温度は低下し,その影響で鉱石還元速度も低下する。COガス濃度変化の還元速度への影響は小さいと推測される。

Fig. 10.

 Comparison of temperature distribution in packed bed.

Fig. 11.

 Distribution of reduction degree of ore particles (C: Conventional coke, H: High reactivity coke).

Fig. 12.

 Distribution of coke gasification rate (C: Conventional coke, H: High reactivity coke).

5. 高反応性コークス分散配置の影響

5・1 高反応性コークスの配置条件

4・3節では高反応性コークスを全量混合した場合を検討したが,温度への影響,COガスの再生箇所の観点から,鉱石層への部分的な混合が,その特性を生かすために適切と思われる。本節ではFig.13に示すように,中間部のコークスの1/2を上層の鉱石層の1/2と混合した混合層を作り,その混合層を下部あるいは上部に置いた場合を設定した。Fig.13の330mmから435mmまでの層厚105mmのコークス層は全て通常コークスである。混合層中のコークスは通常コークス,高反応性コークスの二つを設定し,計4ケースを検討対象とした。図中でCが通常コークス,Hが高反応性コークスを示す。

Fig. 13.

 Packed bed structure for DEM-CFD calculation (C: Conventional coke, H:High reactivity coke).

5・2 分散配置の反応挙動への影響

Fig.14に充填層内粒子の温度分布を示す。通常コークス使用のa),c)は1373の入口ガス温度に対して,上方に移るにつれて徐々に温度は上昇する。Fig.5の結果と類似している。一方,高反応性コークスを使用したb)d)では,高反応性コークス使用領域の粒子温度が緑色,青色で示され,温度が大きく低下している。a)b)と比較すると,混合層部分で約50Kの温度差が生じている。

Fig. 14.

 Temperature distribution in packed bed (C: Conventional coke, H: High reactivity coke).

鉱石粒子の還元率をFig.15に示す。図下には観察対象の層内鉱石粒子の平均還元率も示した。壁近傍では壁流の効果によって還元率は高いが,平均還元率では通常コークスを使用したa)c)の還元率が高い。b)d)の混合層部分の還元率が低く,わずかであるが,高反応性コークスを上部に置いたd)はb)に比べて平均還元率は高い。Fig.16はコークスのガス化率を示す。図中,高反応性コークス使用時には,コークスガス化率はその領域において高い数値を示している。

Fig. 15.

 Distribution of reduction degree of ore particles (C: Conventional coke, H: High reactivity coke).

Fig. 16.

 Distribution of coke gasification rate (C: Conventional coke, H: High reactivity coke).

Fig.17は充填層内のCOガス濃度分布を示す。435mm以下の分布には4ケース共に差異はない。高反応性コークス混合層を下部に配置したb)ではa)に比べてCOガスが再生される。その影響は上方の鉱石層にまで及ぶが,還元の促進効果はFig.15からわかるように少ない。温度低下の影響の方が大きい。またd)のCOガス濃度分布はc)と同等である。Fig.18は注目領域における断面平均のCOガス濃度変化を示す。a)b)c)d)はFig.13の層構造と同一である。下部にコークス混合層を配置したa)b)共に,混合層上部配置の場合より全体のCOガス濃度は高いが,b)の高反応性コークス使用時にはさらに高いCO濃度を示す。c)とd)は下部において同一濃度分布を示すが,高反応性コークス使用のd)では徐々にCO濃度は上昇する。高反応性コークス使用によってCOガス濃度上昇は認められるが,還元促進への効果はない。

Fig. 17.

 Distribution of CO gas fraction in the gas phase (C: Conventional coke, H: High reactivity coke).

Fig. 18.

 Longitudinal CO gas fraction in the gas phase.

5・3 粒子温度と還元率の粒子毎分布

5・3・1 粒子単位に基づく温度分布

本モデルの特徴として粒子毎の温度,反応率分布を計算している。これらの情報を直接的に見ることによって上記の結果をさらに詳細に検討できる。Fig.19は層の半裁部分における全粒子の温度,鉱石粒子の還元率分布を粒子位置と対応させて表示したものである。層構造はFig.13のa)b)c)d)と共通である。全体に個別の粒子単位で表示すると特定高さでも幅が生じている。後述するように高反応性コークスの領域では特に幅が拡大する。反応速度は温度に非線形で敏感に変化し,その反応熱が粒子温度に回帰する。高反応性コークスでは局所的な反応熱の影響が強く現れるものと推測される。粒子単位で計算している本モデルの一つの情報と思われる。

Fig. 19.

 Longitudinal particle temperature distribution and reduction degree of ore particles.

全体に共通の層構造を持つ下端から435mmまでは4ケースともに差違は小さい。中間のコークス層の温度は条件によって異なるが,上方の温度変化が粒子間熱伝導による影響である。a)b)は下部にコークス混合層を設けた場合であるが,a)は還元反応熱の効果によって上方に向かって徐々に粒子温度が上昇するのに対し,高反応性コークスを用いたb)では30K~40Kの粒子温度低下が明確に観察される。活発なコークスガス化反応によって,粒子単位の温度自身も影響され,この位置での温度の振れ幅は大きい。Fig.14と同一のデータであるが,視覚的にその特徴を明確に把握できる。上部ではb)の場合も温度は還元反応熱で上昇する。鉱石層上部に混合層を配置したc)d)では,やはりd)の高反応性コークス使用部位で粒子温度は約30K低下する。粒子毎の振れ幅の拡大はb)と同様である。高反応性コークス使用部位では大きな温度低下を招く。

5・3・2 粒子単位の還元率分布

Fig.19の粒子単位の還元率に注目すると,同一高さでも,どのケースでも高い温度を持つ粒子群と低い粒子群に二分される。高い温度を持つ粒子群は壁流の影響を受けた領域のもので,低い粒子群は中心付近の粒子に相当する。壁流を除いた領域の粒子還元率が層構造を直接に反映している。4つのケース共に300mm以下では同一の傾向を持つ。COガスの消費に従って徐々に還元率は徐々に低下する。下端から435mm上の領域に注目すると,a)b)の場合,Fig.18のb)の方がCOガス濃度は高いが,その差異は小さく,温度低下によって還元率は低下傾向にある。c)とd)では,b)と同様にd)の高反応性コークス使用箇所では還元率は低い。b)と比較すると,d)の場合の方が還元率は若干高い。b)では鉱石層下部に高反応コークスを配置したために,その領域の温度低下が上方の鉱石層にまで影響し,還元率の低下を招いたものと考えられる。

5・3・3 高反応性コークス配置の効果

Yokoyamaらの結果では通常コークスに対し,高反応性コークス使用によって還元率は向上し,混合層の上部配置,下部配置共に大きな差はなく,均一混合の場合が望ましいとの結果を得ている8)。これらの充填層還元実験は外部加熱によって等温場を設定しており,反応熱の効果は現れにくい。COガスの濃度変化が影響する。本研究では断熱場を設定し,反応熱,固気対流伝熱,粒子間伝熱が相互に影響しあう。実高炉条件では,ガス速度は高く,対流による熱移動が反応熱を緩和すると予測される。一方,一般の充填層実験,本計算条件では,上方からの荷重がなく,高いガス速度では流動化を生じるなど静止充填層を維持できなくなるため,抑制した気流条件を選択している。しかし,相対的な熱の授受に関しては本計算条件でも実高炉の状況を反映していると考えられる。

総合的に,高反応性コークスの使用は高炉の熱的保存帯のようにガス,固体の温度が接近している場合,活発なコークスガス化反応によって低温化の効果は認められる。同時にCOガスの生成も上昇傾向にある。しかしながら,本計算条件では温度低下に伴って鉱石還元速度が低下するために,還元の進行が損なわれる。高反応性コークス使用時には,速度論的にその温度低下を補える鉱石側の被還元性の向上も同時に考えなければならないとの指摘もある26)。HiguchiらはBIS炉の実験によって7),高反応性コークスとしてフェロコークスを用いた場合,保存帯温度は低下することを確認している。その結果では低下した保存帯温度と対応する焼結鉱還元率は同等と解釈される。BIS炉は向流形の高炉を模擬した炉であるのに対し,著者らの結果は固定層条件で限られた条件での計算例である。より高炉に近づけるためには本モデルをさらに移動層形式に展開しなければならない。鉱石側の被還元性向上によって,低温下でも鉱石還元はより平衡に近づき,還元率も復元する可能性もあり,高反応性コークス使用についての詳細な議論を行うには今後の課題も有する。

6. 結言

コークスと鉱石より構成される断熱系小型充填層を対象に,充填層構造がコークス,鉱石粒子の反応性に及ぼす影響を,個々の粒子毎に反応率を導出できるDEM-CFDモデルを用いて解析し,以下の知見を得た。

1)コークス,鉱石の層状装入と混合装入による反応挙動への影響を本モデルで解析した。還元反応熱によって上部ほど温度は上昇する。層状装入と混合装入を比較すると,それら層構造変化の反応率への影響は小さい。

2)通常コークスの替わりに高反応性コークスを用いると,活発なコークスガス化反応によって充填層温度は低下する。その温度低下に伴って鉱石還元速度も小さくなり,結果的に還元の進行が遅れる。

3)高反応性コークスから成る混合層を鉱石層下部あるいは上部に置いた場合,高反応性コークスによる吸熱効果がその領域の温度分布に影響し,いずれの場合にも還元率の低下を招く。COガス濃度はその使用部位で上昇するが,還元への効果は小さい。下部に高反応性コークスを設けた場合には,温度低下が上部にまで及ぶ。高反応性コークスを用いる場合,層構造の最適化および鉱石の被還元性の向上が必要と推察される。

文献
 
© 2013 The Iron and Steel Institute of Japan

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