Tetsu-to-Hagane
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Effect of Nitrogen on Blister Growth Process of Blistering during High Temperature Oxidation of Steel
Yasumitsu KondoHiroshi TaneiKohsaku UshiodaMuneyuki MaedaYoshio Abe
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2013 Volume 99 Issue 9 Pages 559-563

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Synopsis:

Blistering occurs when oxide scale swells during oxidation at high temperatures. Blistered scale causes surface defects when rolled. The present study investigated the effect of nitrogen on blister growth when steel is oxidized at high temperatures, and drew the following conclusions. Atmospheric conditions before oxidation affect blister growth. Blisters nucleate but do not grow, when a steel sample is held in Ar gas or in vacuum before oxidation. Blisters inflate when a steel sample is held in N2 gas before oxidation. The gas inside the grown blisters is mainly N2 gas. The steel surface is nitrided in N2 gas at high temperatures. It is deduced that the steel surface is nitrided before oxidation, and the nitrogen component causes blister growth upon its release as N2 gas at the scale/steel interface.

1. 諸論

熱間圧延中に鋼材表面の酸化スケールが剥離して膨れるブリスタリングという現象がある。ブリスターが発生した状態で鋼材が圧延されると表面疵の原因となることが知られている。表面疵を防止するためにも,ブリスターの発生原因を理解することが重要である。

ブリスタリングはスケール生成に伴う鋼材からのガス発生1,2)やスケールの成長応力3,4,5)が原因であると報告されている。ブリスターの発生過程には核生成,成長,合体,収縮などの過程を経ることがわかっている6,7)。ブリスターの発生防止の観点から,核生成条件やその成長機構に関する研究がほとんどである2,4,5)。しかしながら,これではブリスタリング現象を完全に理解することにはならず,例えばブリスター内部ガスの組成に関しては研究例が少ない。Griffithは純酸素雰囲気の酸化ではブリスターは発生しないことや,雰囲気ガスの窒素濃度が30%以上の条件でブリスターが発生することを報告している3)。本研究では,ブリスター成長への窒素ガスの影響を詳細に調査する。

2. 実験方法

Table 1に示す化学成分の鋼材を供試材とした。試料は30×30×4[mm]のサイズに研削して使用した。本研究ではTypeIとTypeIIの二種類の酸化実験を行った。実験条件をTable 2に示す。TypeIの実験では無酸化雰囲気で加熱した試料を取り出して,大気中での放冷中に試料を酸化させた。この実験には電気炉を使用し,試料は無酸化雰囲気中で1100°Cまで加熱して3600秒保持した後,試料を取り出して酸化させた。この時の無酸化の雰囲気条件を窒素(N2),アルゴン(Ar)および真空とした。

Table 1. Chemical compositions of the sample. [mass%]
CSiMnPSAlN
0.160.0710.70.0080.0080.0180.0032
Table 2. Experimental conditions.
No.Type of experimentsTemp.Before oxidationOxidationCooling
Atmosphere and timeAtmosphere and timeAtmosphere
AI1100°CN2×3600sOxidized during cooling in the air
B1100°CAr×3600sOxidized during cooling in the air
C1100°CVacuum×3600sOxidized during cooling in the air
DII950°CN2×3600sAir×120sN2
E950°CAr×3600sAir×120sN2
F1000°CN2×3600s(1%O2+31%H2O+68%.N2)×300s→Air×41sHe

TypeIIの実験では試料を等温条件で酸化させた。この実験には赤外線加熱炉を用い,最初に無酸化雰囲気で試料を加熱して3600秒保持し,その後雰囲気を酸化雰囲気に置換して試料を酸化させた。保持温度と酸化温度は同じとした。加熱時と3600秒の保持時の無酸化雰囲気を窒素(N2)とアルゴン(Ar)のいずれかで行った。炉内の雰囲気を無酸化雰囲気から大気へと切り替えることで酸化を開始した。これらの実験条件を整理してTable 2に示す。酸化中の試料をビデオにて観察し,ブリスターの発生と成長過程を記録した。

条件Fではブリスターの成長時における内部ガスの測定を行った。試料の酸化時にブリスターの成長を観察し,十分に成長した段階となる酸化開始から41秒で冷却を開始した。冷却時にブリスター内部にArやN2ガスの侵入を避けるためにHe雰囲気に切り替えて冷却した。冷却後速やかに樹脂で表面を覆い,硬化後に試料を真空チャンバーに入れ,真空中でドリルにて表面から掘り進みながら,真空チャンバー内のガスの質量電荷比(M/Z, 以下質量数と略す)を質量分析計にて連続して測定した8)。ドリルがブリスターに到達して放出されるピーク時の質量スペクトルとガス放出直前に測定したバックグラウンドのスペクトルを比較して,ブリスター内部のガス組成を求めた。

3. 実験結果

(1)条件AからC

条件AからCの実験後の試料表面外観写真をFig.1に示す。酸化前にN2雰囲気で保持した条件Aでは表面に多くのブリスターが発生している(Fig.1(a))。一方,Ar雰囲気および真空中保持後に酸化した条件Bおよび条件Cでは発生したブリスター数は条件Aの場合と比較して少ない(Fig.1(b)およびFig.1(c))。ブリスターの成長過程に酸化前の雰囲気の違いが影響していることがわかる。

Fig. 1.

 Surface appearances after the oxidations. Samples were oxidized during cooling in the air after heating up in various nonoxidizing atmosphere conditions. (a) N2 atmosphere (condition A). (b) Ar atmosphere (condition B). (c) Vacuum (condition C).

(b)条件DおよびE

酸化前の無酸化雰囲気での加熱の影響を調べるために,等温での酸化実験を行った。950°CにてN2雰囲気で加熱後酸化させた条件Dの酸化時の試料表面外観の変化をFig.2に示す。酸化開始から14秒でブリスターの発生が開始し,18秒後からブリスターが膨れ始める。ブリスターの成長はほぼ28秒で止まる。冷却後に生成したブリスター発生部のスケールを取り除いた後の試料外観をFig.2(e)に示す。ブリスターの発生した場所(Fig.2(a))は個々のブリスターのほぼ中心に対応する(Fig.2(e))。Fig.3Fig.2(e)のArea 1を拡大して示す写真である。ここでは3つのブリスターの発生部があり,その発生部は黒色部となっており,酸化されていることがわかる(Fig.3(a))。

Fig. 2.

 Surface appearances of the sample during and after the oxidation at 950ºC as per Condition D. The sample was held in N2 atmosphere before the oxidation. (a) 14 s. (b) 18 s. (c) 23 s. (d) 28 s. (e) After the oxidation.

Fig. 3.

 Magnified blister in Area 1 of Fig.2. (a) Whole blister. (b) Magnified center of blister.

条件Eは無酸化雰囲気をArとした以外は条件Dと同じ条件である。酸化時の試料外観変化をFig.4に示す。ブリスターは酸化開始から18秒で発生する。その後ブリスターはほとんど成長しない。剥離したスケールを除去後のブリスター部はほとんど黒色であり,発生状態からほとんど変化していないことがわかる。Fig.5Fig.4(e)のArea 1の部分を拡大して示している。ブリスター発生部のほぼ全面が黒色部となっている。これら条件Dおよび条件Eの結果は酸化前の無酸化雰囲気のガス種がブリスターの成長に影響することを示すものである。

Fig. 4.

 Surface appearances of the sample during and after the oxidation at 950ºC as per Condition E. The sample was held in Ar atmosphere before the oxidation. (a) 18 s. (b) 23 s. (c) 28 s. (d) 33 s. (e) After the oxidation.

Fig. 5.

 Blister in Area 1 of Fig.4. (a) Whole blister. (b) Magnified blister.

(3)条件F

条件Fではブリスターの成長後の内部ガス組成の測定のためにブリスターを十分成長させて酸化を停止させた。酸化後の試料表面と樹脂で表面をコーティングした状態の外観写真をFig.6に示す。測定はFig.6に示すPoint 1からPoint 4の4か所で行い,2か所から有意な量のガス発生を検出できた。

Fig. 6.

 Surface appearances with gas analysis points of the sample as per Condition F. (a) After oxidation. (b) After coating with resin.

Point 2での測定された質量数をFig.7に示す。ガスが放出されることで検出されるピーク直前のバックグラウンド(Fig.7(a))と比較して,ピーク時(Fig.7(b))には質量数14, 28, 29, 32, 40を有意に検出された。質量数32はブリスター内部に大気が侵入したことを示しているものの,その濃度は高々1.5%程度であり,この測定結果は十分に意味があると判断した。バックグラウンドと比べてピーク時には質量数28が顕著に増加している。またN2を構成するNに相当する質量数14は検出されるものの,COを構成するCに対応する質量数12は検出されておらず,ピーク時に検出された質量数28はN2ガスが存在することを示すものである。質量数29, 40は対応するガス種がなく,樹脂由来の炭化水素と推定される。測定結果から換算したガス組成をTable 3に示す。十分に成長したブリスター内部はほぼN2ガスで占められていることがわかる。

Fig. 7.

 The results of gas composition analysis at Point 2 in Fig.6 by mass spectroscopy. (a) The background. (b) The gas release.

Table 3. Gas compositions in a grown blister. [%]
H2ON2O2ArCO2
2.195.81.50.6<0.1

4. 考察

試料が酸化する前の雰囲気の鋼中窒素濃度への影響を調査するために,N2雰囲気あるいはAr雰囲気で950°Cにて1時間保持した未酸化の試料を作成して,深さ方向の元素分布をGD-OESにて調査し,その結果をFig.8に示す。N2雰囲気で保持した場合には表層から100μm程度まで200ppm程度の窒素(N)が入っているのに対し,Ar雰囲気で保持した場合には30μm以上の深さでは窒素は検出されていない。これらの結果は高温での窒素雰囲気では表面が窒化されることを示している。鋼が酸化される場合,酸化により鋼の鉄が消費されるために鋼中の合金元素はスケール/地鉄界面に濃化する。この時,窒素は鋼表面でN2ガスとして放出され,このN2ガス放出がブリスターを成長させるものと考えられる。

Fig. 8.

 GD-OES measurements at the surface of the samples just after heating in a non-oxidizing atmosphere. (a) Heated in N2. (b) Heated in Ar.

固体鉄中の窒素の溶解度はシーベルツの法則に従い,γ-Fe中では(1)式で示されている9)。950°Cで窒素分圧0.8atmの条件では230ppmとなり,Fig.8(a)の測定値に近く,溶解度近くまで窒素が固溶していることがわかる。   

log[%N]/PN2=450/T1.955(1)

次に,ブリスター内部の窒素ガス圧について議論する。950°Cの温度条件でスケール成長の放物線則10)を考慮すると,ブリスターが成長している40秒程度の酸化時間で約50μmのスケールが生成すると考えられる。酸化で消費される鉄は厚みで30μmに相当する。酸化前の窒素濃度を200ppmとすると,この時酸化された鉄内部に存在していた窒素はN原子として,2.8×10−7mol cm−2となる。観察例からひとつのブリスターの体積を5×10−4cm3,表面積1cm2あたり約3個と仮定すると,950°C,1MPaの温度・圧力条件で,上記窒素によるブリスター内部の窒素ガス圧は約1MPaとなる。この値はこの温度での酸化スケールを引き離すのに必要な力いわゆるスケールの密着力にほぼ等しい7)

ブリスタリング現象への窒素の影響に関する研究例は少ないものの,Griffith3)は純酸素中の酸化ではブリスターは発生せず,酸化雰囲気中でのN2濃度が30%以上の場合にブリスターが発生することを示しており,雰囲気のN2ガスが補助的な作用を持つことを指摘している。

本研究では鋼表面近傍にふくまれている窒素はブリスターを成長させることを示している。一方,筆者らの研究からブリスターの核生成段階と成長段階に関して次のようなことがわかっている。核生成段階のブリスター内部にはCO,CO2,N2のガスが含まれている7)。ブリスターの核生成段階ではスケールはスケール/地鉄界面で剥離するものの,ブリスターの核生成から成長への移行段階にブリスター発生で剥離した部分の鋼表面が酸化されてスケールが生成する7)。次のブリスターの成長段階ではスケールが剥離した部分の鋼表面は酸化されない7)。950°Cでのブリスターが発生した鋼材断面の光学顕微鏡写真をFig.97)に示す。ブリスターの中心部は酸化されているものの,その周辺は酸化されていない。これらの結果からブリスターの発生および成長機構をFig.10のように推定する。酸化前に鋼材表面は雰囲気のN2ガスによって窒化される。鋼材が酸化されると,炭素と窒素がスケール/地鉄界面に濃化する。これらの元素の濃化により,スケール下面でCO,CO2,N2のガスが発生する。これらのガスの圧力によりスケールが剥離しブリスターが発生を開始する。この段階でブリスター内部に含まれているCOガスとCO2ガスによる解離機構が作用することで,剥離した部分の鋼表面が酸化する7)。スケールが剥離するとその部分の酸化は進行しなくなるため,その部分に濃化した炭素は鋼内部に拡散し始め,ブリスター内部のCOガスとCO2ガスも消失していく。濃化した窒素によるN2ガスは引き続き放出され続け,そのN2ガスによりブリスターは大きく成長し始める。

Fig. 9.

 An optical microscope image at the cross section of a blister forme at 950ºC.7)

Fig. 10.

 Schematic view for the process of blister nucleation and growth. (a) Before oxidation in N2 atmosphere. (b) Oxidation. (c) Blister nucleation upon release of CO, CO2, and N2; (d) Blister growth by N2.

今回観察された鋼表面の窒化現象は一般的な現象と考えれられる。Hayashi and NaritaはFe-5%Al合金の大気中の高温酸化にて,スケール下部の鋼表面に窒化アルミニウムが生成すると報告している11)。従って,大気中で高温状態にある鋼は常に窒化されているものと考えられる。

5. 結論

本研究では鋼の高温酸化で生成するブリスターの成長挙動への窒素の影響を調査し,下記の結論を得た。

(1)酸化前の雰囲気条件がブリスターの成長に影響する。

(2)酸化前の雰囲気がAr雰囲気や真空の場合,ブリスターは発生するものの大きく成長しないのに対し,酸化前の雰囲気がN2雰囲気の場合,ブリスターは発生後に大きく成長する。

(3)成長後のブリスター内部のガス組成はほとんどN2ガスである。

(4)高温でのN2雰囲気条件では鋼表面は窒化される。

(5)酸化前に鋼表面が窒化されている場合に,鋼が酸化する際に発生するN2ガスによりブリスターは成長すると推定される。

文献
 
© 2013 The Iron and Steel Institute of Japan
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