季刊地理学
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論文
エスニック都市空間における場所をめぐる葛藤
— サンフランシスコ・ジャパンタウンの一事例から —
杉浦 直小田 隆史
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2009 年 61 巻 3 号 p. 157-177

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抄録

本論文は,サンフランシスコ・ジャパンタウン(日本町)における一施設「ジャパンタウンボウル」の売却問題(2000年)及びその跡地に建った住・商混合施設「1600ウェブスター」への大手コーヒーショップ・チェイン「スターバックス」店舗進出問題(2005年)の経緯とそこにおける諸活動主体(アクター)間の対立を分析・検討し,それを通じてエスニック都市空間における場所をめぐる葛藤の性質・構造とその意味を考察したものである。このサンフランシスコ日本町における一連の場所をめぐる葛藤の過程のなかで最も強い対立を示したアクター関係は,日本町に進出を企てる外部資本と日本町諸組織との間であり,それは地価にふさわしい経済的開発と地域経済再編を志向する資本主義的都市過程とローカル・エスニック・コミュニティの維持・保全を志向するエスニックに意味付けられた特殊な都市過程との対立として捉えられる。そしてその意味を地理学的に考察するとき,上記の対抗関係はMerrifield (1993) が提示した資本による「想像された空間(conceived space)」とコミュニティの現実の「生きられた場所(lived place)」との対抗関係であり,それらの間の弁証法的調整の過程であると言うことができる。

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© 2009 東北地理学会
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