季刊地理学
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研究ノート
既製のGISソフトとデータを用いた学区の設定方法
— 知多半島の小学校区を事例に —
奥本 有樹
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2010 年 62 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

今日まで学校区の設定に関する研究は多くの蓄積がなされてきたが,プログラミングなどの専門知識や統計資料が必要であった。しかし,近年のGISアプリケーションの発達やデジタルデータの流通により,比較的容易に理論的学区の設定が行える環境が整えられている。そこで本研究は,既製のGISアプリケーションとデータを用いた学校区の設定・評価手法を提案した。
まず,道路ネットワーク上でのボロノイ分割を用いて理論的学区を設定し,学区の児童数を推定した。次にどのような地域において,現状の児童数や面積との差異が大きく表れるのかを考察した。さらに,通学児童数・通学ルートがどのように変化するのかを検討した。分析の結果,都市化の進展に伴って人口が急激に増加した地域において,現状の学区と理論的学区の児童数の違いが大きくなっていた。また,理論的学区の設定により,多くの児童の通学距離が短縮できることが示された。
以上により,児童数の増減は,学区変更に反映されていないことが明らかとなった。同時に,提案した手法により,理論的学区と現状の学区との空間的な違いや,児童数・通学ルートの変化を考察可能であることが指摘できる。

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© 2010 東北地理学会
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