季刊地理学
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研究ノート
自地域学「会津学」の活動とその理念
久島 桃代
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2010 年 62 巻 3 号 p. 127-138

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抄録

近年全国各地で地域の見直し,再生を目的とする自地域学活動が盛んに行われている。本稿では,福島県奥会津地方で活動する「会津学」を対象とし,自地域学がいかなる理念を持ち,具体的にどのような活動を実践しているのか,活動に参加する主体とその実践に着目して検討した。
「会津学」では地域誌『会津学』の刊行を通して,地域で生きる人々や生活のあり方を,聞き書きを中心とした手法で表現し記録している。活動の中心人物であるE氏とK氏の姿勢からは,過疎化の進行する奥会津の中にあって,地域で生きていくための術を懸命に見つけ出そうとする両氏の強い思いが読み取れる。またそれ以外の参加者たちも,E氏やK氏の姿勢に影響を受けながら,自身の身近な生活に目を向け聞き書きを行っている。
研究会活動や『会津学』の編集が行われる,奥会津書房を中心とした参加者たちのネットワークと,E氏やK氏の,『会津学』は次世代の人々に贈るべき手引書である,という強い信念が,大部の『会津学』を現在まで刊行させ続けるひとつの源泉となっている。

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© 2010 東北地理学会
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