季刊地理学
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論文
伊能忠敬測量顕彰碑の建立者葛西昌丕について
田村 眞一
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2015 年 67 巻 2 号 p. 87-100

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抄録

本稿は,岩手県釜石市唐丹町にある測量之碑と星座石について,建立者葛西昌丕の事績を調べた第3番目の論文である。 
測量之碑の重要な点は,西洋の説の地球微動の存在に言及したことである。伊能の頃,北極出地の精度不足のため地球微動を確認出来なかった。葛西は後世の人々に,地球微動の確認を要請したのである。地球微動とは,西洋天文学の影響を受けた概念であり,その上オランダ語版のラランデ書が移入されたばかりで,この中に記述された章動を意識したものと思われる。 
このような知識を葛西はどこで得,その学問の源は,どこかが明らかにされるべき課題である。わずかに残る断片的資料によって明らかにする試みをした。2004年に公表され,その存在が明らかになった伊能のアメリカ大図,及びほぼ10年以上も前に発見された明治初期の頃の唐丹村絵図を基に新しく明らかになった諸点をまとめた。葛西の学統を明らかにする目的で,彼の個人的事情を把握するため,家系を明確にする試みをし,ほぼ完全な家系図が得られた。 
そして,葛西を取り巻く人々との関係を考察し,葛西の学識は仙台で得られたと結論するに至った。

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© 2015 東北地理学会
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