季刊地理学
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農山村の再生に向けた大学の継続的な地域連携
─ 岩手県での活動にもとづく課題提起 ─
桒田 但馬
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2017 年 69 巻 1 号 p. 19-33

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抄録

本稿の目的は,農山村の再生に向けた地域連携事業に関わる研究室活動の課題を提起することである。公立大学である岩手県立大学は地域連携事業を積極的に実施しているが,研究・地域連携本部は大学と研究室の調整機能を果たす点で欠かせない。筆者の研究室は農山村を対象にした受託事業,助成事業を活用するために,長期にわたり町村調査報告書シリーズを刊行し,連携事業の初期段階で多くの住民の参加を得てきた。また研究室は小規模であっても多くの地域を活動対象にしてきたが,機動的かつ段階的な活動は地域に大きな成果,すなわち,地域の取組みとしての「第一歩」をもたらし,住民の主体性や学生への教育などの点で多面的かつ波及的な効果を持っている。このことは地域連携事業の主体として研究室が適切であり,研究室の努力や工夫,研究・地域連携本部との融合的な関係しだいで,農山村再生のための事業を短い期間で提案し,地域によるその実践をサポートすることまで可能になる。これに対して,地域の持続可能な取組みをサポートするためには,研究室に対する大学や学部の独自の支援が必要になり,大学の継続的な地域連携が問われることになる。

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© 2017 東北地理学会
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