季刊地理学
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研究ノート
離島の医療再編による日常生活圏域のケアへの影響
── 長崎県新上五島町を事例として ──
中村 努
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69 巻 (2017) 4 号 p. 189-206

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抄録

本稿では,長崎県新上五島町を事例に,医療再編による日常生活圏域のケアへの影響を空間的側面から明らかにした。入院や人工透析,訪問看護の機能が集約された結果,上五島病院に対するケア資源の依存度は高まる一方,若松,奈良尾両地区において,人工透析や訪問看護サービスへのアクセシビリティの低下は,周辺性をより高めた。これに対して,社会福祉協議会やNPO法人が,介護タクシーや訪問看護サービスの新規事業を展開することによってアクセスの改善が図られた。

新上五島町では,カトリック信徒が多いという歴史的経緯から,居宅サービスに対する需要は高い。ただし,介護や看護に関わる人員や,周辺地域のボランティアの不足によって,日常生活を送るための周辺性の克服における限界もまた明らかになった。特に,周辺部における見守りによる支援が必要な認知症の独居高齢世帯への対応の困難性が指摘された。

今後,地域包括ケアシステムを考えるにあたって,自治体領域内の地域差のみならず,スケール間の事象の結びつきを考慮に入れた,島内外の資源のネットワーク化とそのマネジメントが求められる。

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