東北地理
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岩手県における公立小学校の統廃合に関する地理学的考察
石郷岡 信行
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1991 年 43 巻 4 号 p. 287-297

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抄録

適正な学校規模の維持は, 教育効果をあげるうえでの重要な要件の一つである。教育行政当局は学校の新設や統廃合といった施策を講じながら, 一定水準の学校規模の維持に努めてきた。諸般の事情から児童数の減少が続く岩手県では, 学校数の調整は新設よりも統廃合によるものが中心となっている。県内の公立小学校の場合, 統廃合のピークは1965年から75年にかけての10年間であるが, 児童数減少のピークは1960年代の10年間で, 実際の統廃合は, 児童数の減少にやや遅れる形で実施されてきた。同じ県内でも, 児童数および学校数の増減比率は地域差が大きく, その形態は6類型に分類される。このうち、正反対の性格をもつのが「統廃合遅延型」と「統廃合先進地型」の2類型で, 前者は県北や沿岸を中心とする人口低密度・経済停滞地域, 後者は県南を中心とする人口高密度・経済安定地域にみられる。学校の統廃合は, 地域がかかえる諸問題とかかわり, これが地域住民の統廃合に対する態度, さらには学校立地の密度に大きく影響を与えているものと思われる。なお, 統廃合により廃止される学校は年々小規模化してきており, 統廃合の様相も時代とともに変化している。

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