2002 年 54 巻 1 号 p. 1-19
本研究では, 在日韓国・朝鮮人経営者が多数を占める神戸ケミカルシューズ産地における産業とエスニシティの関係について, (1) シューズメーカーの取引先企業の選定におけるエスニシティの影響の有無, (2) 企業経営における在日韓国・朝鮮人コミュニティの存在, (3)「震災復興まちづくり」における産地と民族集団の係わり, の3側面から検討した。その結果, 在日韓国・朝鮮人経営者の企業取引連関において, 取引先の選定は一般に経済性に基づいて行われており, そこにはエスニシティの影響は認められなかった。しかしながら, 当産地には民族性を契機とした多種類の社会経済的ネットワークが存在し, そこでは個々の企業と地域社会が密接に係わりあい, 経営者にとって重要な情報交換の場が形成されている。また震災復興における「まちづくり」構想においては, 産業とアジアとの交流を掲げ, 産地の活性化を担う一つの資源としてエスニシティが作用している。