南西諸島の防風対策は, 屋敷囲いとして石垣のみを用いる場合と, 石垣に防風林のフグギを組み合わせる場合がある。本研究では屋敷囲いとしての石垣とフクギの防風林を同時に用いる例として, 集落が第二次大戦の影響をほとんど受けず, 防風に対する屋敷囲いの原型を残している沖縄県の渡名喜島を取り上げた。渡名喜島はハブが多く, トンボロ上に住居を築かねばならなかった。低平なトンボロ上に立地し, 屋敷を掘り下げて防風をおこなうことが渡名喜島の特色ある景観である。掘り出した砂を母屋のまわりに積む必要があり, 内石垣で砂が崩れないようにした。道路側には外石垣を用い, その間に砂を積んで, フクギを2~5列を植えることにより防風効果を高めている。村落の道路は交差軸を少しずらし, 道路を吹き抜ける強風が弱まるように工夫がされている。しかし, 1973年以降, 失業対策のたに外石垣をブロック塀に変えた。その後, RC工法の母屋も全戸の34%に増え, 強風に対して母屋の強度が増してきた。それにともない, 近年屋敷の掘り下げを埋め戻す例が多くなり, 屋敷囲いが変化しつつある。