季刊地理学
Online ISSN : 1884-1252
Print ISSN : 0916-7889
ISSN-L : 0916-7889
西ジャワ農村における農家世帯の干害時の対応
ボゴール県スカジャディ村の事例
遠藤 尚
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 60 巻 1 号 p. 1-22

詳細
抄録

本稿では, 西ジャワ農村における干害時の対応から農家世帯の生計と脆弱性について考察することを目的としている。そのために2003年の干害時におけるボゴール県スカジャディ村の1集落を事例にとり, リスク軽減手段として代替作物選択と所得減少への対処手段に注目し, 社会経済的階層や生計構成の異なる世帯間の対応の差異を分析した。その結果, 作物選択, 被災による所得減少への対処, 特に次期作資金減少への対処それぞれにおいて, 世帯生計における農業の位置づけが影響することが確認された。当地域において社会経済的上層に位置し, 生計構成も比較的恵まれた状況にある大規模水田所有集団の所属世帯は少雨への対応時も比較的積極的な戦略をとっていた。また, 他の水田経営世帯についても, 経営農地の水利条件や農業に投入可能な労働力, ひいては生計における農業の占める割合に応じ, 世帯生計全体として, より多くの利益獲得が可能な作物選択を行っている。そして, 次期作資金減少に対しては, 野菜の仲買人からの借り入れ, または集落内外の農外就業機会の活用, および子供世帯との互恵的関係を通した収入補填など各世帯の生計構成/戦略に最も適した対処を行っていることがわかった。

著者関連情報
© 東北地理学会
次の記事
feedback
Top