2010 年 26 巻 4 号 p. 109-119
進行癌患者の血清MMP-1とMMP抑制物質TIMP-2を測定し, MMP-1/TIPM-2比でMMP-1活性を評価した. さらに, 遠赤外線による全身ハイパーサーミア (WBH) 後の変化を測定し, 考察を加えた. 1998年6月~1999年1月に外来受診した転移のある進行癌患者46名及び健常者20名, さらに, 1コース (4回) のWBHを施行した36例の終了3週間後のMMP-1活性を検討した. 患者のMMP-1の平均血清濃度は健常者と比べ有意に高く, TIPM-2は著明に低下していた. MMP-1/TIPM-2で活性値を評価すると健常者0.15に対して0.43と明らかに高い活性を示した. WBH後ではCR.PR群9例は0.37から0.21と正常レベル近くまでのMMP-1活性の抑制が認められ, NC.PD群27例では0.43から0.51と活性が促進していた. 進行癌患者は高MMP-1低TIMP-2血症を呈し, MMP-1活性が正常者の3倍近く亢進し, 転移浸潤が起こりやすい状態にある可能性が示唆された. また, WBH効果例では活性が抑制され, 同治療によるMMP-1活性抑制効果が考えられた.