Thermal Medicine
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新規抗癌剤導入後の大腸癌肝転移に対するthermal ablationの役割
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2010 年 27 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

新規抗癌剤 (オキサリプラチン, イリノテカン) や分子標的治療薬 (ベバシズマブ, セツキシマブ) の登場により, 初診時に切除不能と診断された症例でも切除可能となり, 長期生存が望めるようになってきている. 一方, 肝細胞癌治療に用いられてきたラジオ波凝固療法 (RFA) は近年大腸癌肝転移の治療に応用されている. しかし大腸癌肝転移に対するRFAの有効性や安全性を, 手術や全身化学療法と比較した大規模臨床試験はない.
 大腸癌肝転移に対するRFAに関して, サンプルサイズの大きな後ろ向き研究 (RFA施行例が40例以上) が現在まで5報ある. いずれも, 患者背景やアプローチが異なるが, 3年, 5年累積生存率はそれぞれ42~57%, 21~37%で, RFA治療部位再発の頻度は9~15%であった. RFA施行前またはRFA施行後に新規抗癌剤 (オキサリプラチン, イリノテカン) や分子標的治療薬 (ベバシズマブ) による化学療法を施行した報告における5年累積生存率は34~54%で, RFA治療部位再発の頻度は29.7~42.5%であった. 新規抗癌剤や分子標的治療を併用することにより予後が改善する可能性はあるが, RFAの局所制御効果の向上は明らかではない. また肝切除とRFAを併用した報告における3年, 5年累積生存率はそれぞれ38~43%, 47.3~68%で, RFA治療部位再発の頻度は5~17.4%であった.
 当科では切除不能大腸癌肝転移例に対してFOLFOX±ベバシズマブを施行し, 切除可能となった場合には速やかに肝切除を施行する方針としている. また多発例で, 全ての肝転移巣を切除できない時には肝切除とRFAを併用して完全治療を目指している. 2005年5月以降の切除不能大腸癌肝転移症例で, 全身化学療法のみを施行した71例のうち26例 (37%) が肝切除可能となった. 切除可能となった26例中8例に対してはRFA併用肝切除を施行した. RFAを施行した40結節のうち, RFA治療部位再発は1結節 (2.5%) と極めて低率であり, 化学療法が効果的な状況でのRFAの局所制御効果の高さが証明された.
 新規抗癌剤や分子標的治療薬, また肝切除をRFAと併用することにより, 大腸癌肝転移に対する肝切除の適応拡大や予後の改善が期待される.

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© 2010 日本ハイパーサーミア学会
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