Thermal Medicine
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名古屋市立大学整形外科における温熱療法の歩み
相羽 久輝山田 聡三輪 真嗣大塚 隆信
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2017 年 33 巻 4 号 p. 117-127

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抄録

我々は,高悪性度軟部腫瘍に対し,術前に腫瘍を縮小・壊死させることで,腫瘍切除範囲を縮小し,患肢温存を行うことを目標とする,温熱化学放射線療法(Radio-hyperthermo-chemotherapy: RHC)の研究・開発を行ってきた.本著では,温熱療法の歴史的な発展と,当院で行われたRHCの基礎研究と臨床応用につき振り返ることを目的とする.
基礎研究では,未分化多形肉腫株を42-43°C/1時間にて加温処理を行うことでアポトーシスが生ずることを確認し,さらにFACSによる細胞周期の解析で放射線抵抗性であるG1期の細胞が,特異的に細胞死していることを示した.さらに,シスプラチンと加温処置を同時に行うことで細胞内の抗がん剤濃度が上昇し,DNA生成阻害効果が高まるこを示した.これらの研究結果から温熱療法は放射線療法と化学療法に相乗的に作用することが示唆された.
そこで我々は1990年代初頭よりRHCを臨床応用し,1990-1999年代では44名の患者(21例,未分化多形肉腫;7例,高悪性度脂肪肉腫;その他;16例)にRHCを行い,局所再発は1例と,高い局所制御率(97.1%)を報告した.また,2004-2013年に治療された20名の患者から採取した手術検体を病理学的に解析すると,3名(15%)は完全壊死,6名(30%)は90%以上壊死率,9名(45%)は50-90%以上の壊死率であった.これらの患者群では,90%以上の壊死率が得られた場合,死亡症例は認められなかった.
さらに,RHCにて治療された患者群と,日本整形外科学会による骨・軟部腫瘍登録データー群(BSTT群)を,傾向スコア分析により,患者背景,腫瘍径,組織型,深度,性別などを全て調整してカプランマイヤー法にて腫瘍学転機に関し分析を行った.その結果,5年生存率はRHC群で81.2%,BSTT群では78.3%と有意差は認められなかった(p=0.52)が,局所コントロールはRHC群で97.3%,BSTT群では87.1%であり,RHCを行った場合,有意に高い局所制御率が認められた(p=0.04).以上に加え,BSTT群では切除縁により局所再発率が上昇する傾向が認めらたが,RHC群では辺縁切除・腫瘍内切除でも低い再発率であった.
このように,名古屋市立大学では温熱療法に古くから着目し,基礎実験を行うとともにRHCとして臨床応用を行ってきた.腫瘍の局所制御率に関し,従来の補助療法に比べ高い効果を発揮し,縮小手術が可能になったと考えられる.今後も更なる研究を重ね,より精度の高い手法を確立したい.

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© 2017 日本ハイパーサーミア学会
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