Thermal Medicine
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REVIEW
磁性ナノ粒子の磁気加温を応用した癌臨床研究の総括と今後の方向性
森野 富夫惠谷 俊紀内木 拓河合 憲康菊森 豊根西田 佳弘山本 憲幸安井 孝周
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2019 年 35 巻 3 号 p. 23-32

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抄録

固形癌に局部注射された磁性ナノ粒子(マグネタイト)に,体外から磁場を照射し,その発熱によって癌を治療する方法が開発され,筆者らの2大学を含む,国内4大学において臨床研究が実施された.本邦で開発された3種類のマグネタイト含有組成ナノ粒子と周波数の異なる2型式の磁場照射装置から,4パターンの組み合わせで臨床研究が立案実施され,近年その結果が報告された.本レビューでは,それら結果を筆者らの未発表データも交えながら総括し,更なる臨床応用の可能性について検討した.この結果,局部注射,画像検出,並びに磁場照射などの主要施術要素に関して,臨床フィジビリティを阻害する大きな要因は見出されなかった.更に,マグネタイト正電荷脂質複合粒子(magnetite cationic liposomes, MCL)と交番磁場照射装置(100-115 KHz)の組み合わせにおいて,照射体表面の加温や腫瘍周辺組織の障害を誘発することなく,腫瘍の縮小効果が得られることが見出された.しかしながら,施術のコントロール指標とした腫瘍温度の上昇が達成されたにも関わらず,縮小効果が認められない症例の存在が示されたため,更なる効果向上を目的に,腫瘍体積当たりの投与量表記(mg/cm3)の重要性を述べ,腫瘍体積当たりの発熱量(J/cm3)を施術のコントロール指標とする可能性を論じた.

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© © 2019, 日本ハイパーサーミア学会
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