Thermal Medicine
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3Dプリンティングモデルを用いた変形性関節症治療のための空胴共振器加温装置の加温特性
井関 祐也黒澤 俊祐新藤 康弘加藤 和夫
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2021 年 37 巻 4 号 p. 113-130

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抄録

変形性関節症(OA)は最も一般的な関節疾患の1つである.変形性膝関節症を対象とした温熱療法では,膝関節中心に位置する関節腔内を36~38 ℃程度に温めることで痛みの緩和および病変の進行を防ぐ効果があるとされているが,骨に覆われた膝関節腔内を効果的に加温することは電磁気学的にも伝熱工学的にも容易ではない.このような背景から,著者らは非接触深部加温が可能な空胴共振器加温装置を提案している.これまで,ウシの膝関節を用いた加熱実験や3次元のコンピュータ・シミュレーションなどから,膝関節の深部領域を加温可能であることを示してきた.しかしながら,ウシ膝関節を用いた加温実験では1次元的な温度分布しか明らかになっておらず,不均一で解剖学的な構造を有する被加温体内部の2次元温度分布をコンピュータ・シミュレーションによる温度分布結果と直接的に比較したことがなかった.また,超音波画像を用いた非侵襲温度計測手法についても研究を進め,1.0 ℃以下の温度測定精度で温度分布計測が可能であることを示してきたが,超音波による温度計測実験においても,均一組織による実験に留まっており,骨を含む解剖学的な構造を有する被加温体内部の温度分布計測について検討の必要性があった.このような背景から,本論文では2次元医用画像からFEMモデルおよび3Dプリンターによって3Dプリンティングモデルを作製することにより,解剖学的な構造を有する被加温体のコンピュータ・シミュレーション,赤外線サーモカメラによって撮像した2次元サーモ画像,超音波による温度計測の比較を行い,数値的および実験的検討の両面から本加温装置および本温度計測手法の有用性を評価した.本論文では,初めに,2次元医用画像から3D FEM膝モデルと3Dプリンティング膝型モデルを作製した.次に,FEM解析によって温度分布を計算し,試作加温システムおよび3Dプリンティングモデルを用いた加温実験結果との比較を行った.第三に,超音波画像を撮像するためのロボットアームシステムの精度を把握するため,位置決め精度実験を行った.最後に,超音波画像から3Dプリンティング膝モデル内の温度分布を測定した.以上の結果から,空胴共振器加温装置は膝関節の深部領域を加温可能であることを数値的および実験的検討から確認し,温熱治療実現のために有用であることを示した.

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© © 2021, 日本ハイパーサーミア学会
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