日本ハイパーサーミア学会誌
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肝細胞癌に対する内視鏡下凝固療法
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2007 年 23 巻 2 号 p. 63-70

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抄録

われわれは1994年にマイクロ波凝固療法とラジオ波焼灼療法を用いた肝細胞癌に対する内視鏡下局所凝固療法を開発した. 表在性の4cm以下, 3個以下で, 門脈浸潤がなく, 経皮的なアプローチが不適当な肝細胞癌を治療対象とした. 当科で450例の熱凝固療法を行ったが, 内訳は経皮的52%, 内視鏡下33%, 開胸・開腹15%であった. 胸腔鏡アプローチは肝ドーム部の腫瘍に, 腹腔鏡下アプローチはそれ以外の部位の腫瘍に行った. 当科で内視鏡下局所凝固療法を行った115例の検討では, 平均腫瘍径は25mm (5-50mm), 平均腫瘍個数は2.2個 (1-5個) で, 肝障害度BまたはCの症例が68%を占めた. 腫瘍壊死効果から算出した奏功率は95%で, 治療部位再発は観察期間中央値が28ヶ月の時点で4% (5/115例) であった. すべての治療部位再発はサージカルマージンが5mm以下の不十分治療例で認められた. 内視鏡下局所凝固療法における平均の術中出血は80g, 手術時間は3時間, 術後在院日数は8日であり, 同時期に肝部分切除を行った症例より有意に低値であった. 輸血を必要とした症例は皆無であった. 肝機能がより不良であるにもかかわらず, 内視鏡下局所凝固療法の5年累積生存率は60%と良好であった. 内視鏡下局所凝固療法では術後合併症を6.9%に認めた. 術後肝不全を2名に, 膿胸と肝膿瘍を1例に認めたが, ポートサイト再発や悪性細胞の播種は皆無であった. 以上より, 内視鏡下局所凝固療法はその根治性の高さと低侵襲性から, 表在性の肝細胞治療に積極的に用いるべき治療である.

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© 2007 日本ハイパーサーミア学会
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