東海北陸理学療法学術大会誌
第25回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-18
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前腕回外運動に伴う尺骨遠位部の動態分析 
超音波を用いた観察
*笠野 由布子林 典雄
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抄録

【目的】橈骨遠位端骨折後に生じる回外制限の改善は難渋するケースが多く、その要因として、前腕遠位部の筋・腱の癒着や拘縮が想像されるが、その原因を明確に示した報告は少ない。以前我々は、方形回内筋(以下PQ)に対する長母指屈筋の滑走範囲について検討し、早期の母指運動がPQ橈側部の筋・腱の癒着予防において重要である事を示した。〈BR〉本研究の目的は、超音波画像診断装置(以下エコー)を用いて前腕回外運動に伴うPQレベルの尺骨動態の観察を通し、PQ尺側部の深指屈筋(以下FDP)との関連性について言及することである。 【方法】本研究に関する説明を行い、同意を得た健常者9名18肢(男性6名、女性3名、年齢23.6±8.13歳)を対象とした。測定にはALOKA社製超音波画像診断装置SSD-3500SVおよび10.0MHzリニア式プローブを用い、エコーの読影は同一検者が行った。測定部位は、前腕遠位部(方形回内筋長軸の中間)の短軸走査にて橈骨、尺骨、PQを描出し、前腕中間位と回外位の2肢位で行った。〈BR〉測定は、前腕中間位ならびに回外位における橈骨前面の接線と尺骨頂点の距離を測定し、橈骨に対する尺骨の掌背側方向への移動距離を測定した。 【結果】前腕中間位において、尺骨は橈骨に対し平均-2.12±1.34mm背側に位置していた。前腕回外に伴い尺骨は掌側へ移動し、前腕回外位において、尺骨は橈骨に対し平均+2.77±1.97mm掌側に位置していた。〈BR〉前腕中間位から回外位への変化に伴う、尺骨の掌側への移動距離は平均4.89±1.27mmであった。また、回外運動に伴う尺骨の動態は、全例回内を伴った掌側移動が行われていた。 【考察】前腕回外運動に伴い、橈骨に対して尺骨は回内しながら掌側へ移動し、橈骨よりも掌側へ突出する事が確認された。〈BR〉橈骨遠位端骨折後などに生じる回外制限では、回内に伴う尺骨の掌側への移動量が必要であり、尺骨の掌側移動のfirst defenseとなるPQの尺側部の柔軟性は必須となる。また、筋膜表面を滑走するFDP腱の癒着予防はギプス固定中必ず実施されるべき運動療法と考えられる。

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© 2009 東海北陸理学療法学術大会
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