東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: S-04
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主題演題
体重部分免荷トレッドミル歩行トレーニングが大腿骨近位部骨折後患者に及ぼす効果
*牛島 秀明安形 真樹藤本 有香横地 正裕河村 美穂(Dr.)猪田 邦雄(Dr.)
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抄録

【目的】 脳卒中患者に対して体重免荷装置を用いたトレッドミル歩行訓練(Body Weight Supported Treadmill Training;以下、BWSTT)の報告が近年多くなっているが、整形外科疾患に対するBWSTTの効果を示した研究は少ない。今回BWSTTが高齢者の大腿骨近位部骨折術後の患者に対し、歩行機能、バランス機能、ADLに与える影響を検討したので報告する。
【方法】 当院回復期病棟に入院した65歳以上の大腿骨近位部骨折術後患者12例を対象として、術後5週目となった時点で無作為に2群に分けた。一方の群にはROM、及び筋力増強運動、平地歩行練習などの通常の理学療法にBWSTTを加え(以下BWSTT群、6例;頸部骨折2例、転子部骨折4例、年齢81.3±5.0歳、女性5例、男性1例)、もう一方の群は通常の理学療法のみ(以下CON群、6例;頸部骨折1例、転子部骨折5例、年齢84.3±10.7歳、女性5例、男性1例)とした。理学療法は1日に60分間実施した。BWSTT群は、BWSTTを15分遂行可能な最大速度で1日合計15分間、週5回の頻度で4週間行った。免荷量はBWSTTを15分遂行できるよう体重の0~80%免荷した。評価は、介入開始時と終了時に行った。評価項目は10m最大歩行速度、Timed Up&Go Test(以下、TUG)、Functional Reach Test(以下、FRT)を患側上肢のリーチで測定、Functional Independence Measure(以下、FIM)の運動項目とした。統計学的分析は、2群とも介入前後に関してはWilcoxon signed-rank testを、2群間に関してはMann-Whitney U testを用い危険率5%未満として比較検討した。なお本研究はヘルシンキ宣言に基づき作成した同意書を用いて本研究の内容を説明し、同意を得た者を対象とした。
【結果】 2群とも歩行速度、TUG, FRT, FIMにおいて、いずれの評価においても介入前後で有意な改善が認められた(p<0.05)。一方、2群間の比較においては、各評価指標とも有意差が認められなかったが、歩行速度においては、BWSTT群の方が介入前後での変化率が大きく、改善傾向がみられた(p=0.078)。
【考察】 片麻痺患者を対象としたBWSTTの効果は先行研究において、歩行速度、持久力など歩行機能に改善を認めた報告がされている。今回の結果では、通常の理学療法にBWSTTを加えても2群間の比較においてTUG, FRT, FIMの改善に有意差は認められなかったが、歩行速度に改善傾向がみられたことから、BWSTTが高齢者の大腿骨近位部骨折術後の患者に対しても歩行機能に特異的に影響を及ぼす可能性が示された。プロトコルは、BWSTTを15分遂行可能な最大歩行速度と設定したが、平地歩行速度以上の速い速度に設定するなど歩行速度に変化をもたせることにより、さらなる歩行機能の改善が生じる可能性が考えられる。今後、評価指標、介入方法などをさらに検討して、大腿骨近位部骨折患者におけるBWSTT有用性について検討していきたい。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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