東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: S-12
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主題演題
局所低強度運動下における筋酸素化動態と無酸素性作業閾値の関連性についての検討 ―ミトコンドリアの機能評価の確立に向けて―
*新津 雅也西田 裕介
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抄録

【はじめに】 ミトコンドリアはエネルギー代謝に不可欠であり、その機能はエネルギー生成効率に反映される。生体組織において90%以上の酸素がミトコンドリアによって利用され、血流遮断時の筋酸素化(Oxy-Hb)の低下率(Muscle Oxygenation2:MO2)と遮断終了直後のOxy-Hbの回復率(Time Recovery:TR)は酸素利用能を反映することが報告されている。また、ミトコンドリアの機能と無酸素性作業閾値(Anaerobic Threshold:AT)は相関を示すことが報告されている。以上のことから、本研究ではMO2, TRとATの関係を明らかにし、MO2とTRがミトコンドリアの機能を反映する指標となりうるのか検証した。
【方法】 対象は健常男性8名(24±4歳167.5±7.5㎝、57.8±8.1㎏)とした。Oxy-Hbは背臥位にて股関節、膝関節を90度にしてヒラメ筋を対象にして測定した。5分間の安静後に3秒間で1回の足関節自動底屈運動と3秒間の休息をメトロノームに合わせて交互に3分30秒間行った。運動終了30秒前より30秒間血流遮断を行い、その後3分間の回復を図った。ATは自転車エルゴメータを用いたRamp負荷試験により測定した。解析について、MO2は安静時を基準とした運動時の変化量(%MO2 ex-rest)を用い、TRは遮断終了後のOxy-Hbが最大に達した時の回復率をそれに達するまでの時間で除した値を用い、これらをミトコンドリアの機能と定義した。なお、本研究は聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認のもと実施した。
【結果】 Oxy-Hbの推移において、全ての被験者で血流遮断時に低下を示した。%MO2(ex-rest)とATについてはr=0.58の相関を示した。一方、TRとATについてはデータにばらつきが認められたが、一部で相関傾向を示した。また、%MO2(ex-rest)とr=0.69の相関を示した。
【考察】 ATは酸素供給能と酸素利用能を反映するとされているが、健常者ではミトコンドリアの機能と相関することが報告されている。%MO2は血流遮断下での酸素消費量であるため、ミトコンドリアの機能として捉える事ができ、%MO2(ex-rest)とATとの関係からその可能性が示された。一方、TRについてはATと一定の関係を示さなかったが、一部で相関傾向を示し、%MO2(ex-rest)とも相関を認めた。TRはクレアチンリン酸の合成時間と関係しており、本結果と合わせてミトコンドリアの機能を反映しうることが考えられる。
【まとめ】 一時的動脈遮断時におけるOxy-Hbの低下率とその後の回復率をミトコンドリアの機能として捉え、ATとの関連性を検証した結果、相関が示された。よって、%MO2 ex-restとTRはミトコンドリアの機能を反映する指標として用いることができる可能性が示された。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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