東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-13
会議情報

一般口述
高次脳機能検査における立方体透視図模写課題とADL能力との関連性について
*小林 大起成瀬 宏司江西 一成
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 脳血管障害患者のADL低下の原因に高次脳機能障害があり、構成イメージ能力低下はその一つである。その検査として立方体透視図模写課題があり、現在、脳血管障害患者の半側空間無視や構成イメージ能力の評価バッテリーとして用いられている。しかし、構成イメージ能力がADLのどの部分に影響を与え得るのか検討した研究は少ない。そこで本研究では脳血管障害患者において立方体透視図模写を用い、その結果とADLの関係から理学療法場面での意義を検討することを目的とした。
【方法】 検査の理解が困難な者を除外した脳血管障害片麻痺患者23名(男性12名、女性11名。年齢41歳~91歳。罹患期間1カ月~240カ月。麻痺側は右8名、左15名。脳梗塞14名、脳出血4名、クモ膜下出血4名、頭部外傷1名)を対象とした。立方体透視図模写課題を制限時間3分、検者には検査用紙に描かれた立方体透視図を空いたスペースに模写するように指示した。立方体透視図模写の採点は大伴らの基準に従い採点した。他にも線分二等分試験(1㎝以上偏移を陽性と評価)と10m歩行時間の測定を行い、ADL評価はFunctional Independence Measure(以下FIM)を用いた。以上の各値から立方体透視図模写課題とFIM得点、歩行時間、線分二等分試験との関係、さらに線分二等分試験とFIM得点との関係について検討した。統計処理には対応の無いt検定とχ二乗検定、回帰分析を用い危険率5%未満を有意とした。
【結果】 立方体透視図模写課題とFIM総得点には関係を認めなかった。しかし立方体透視図模写課題の採点項目の奥行き線に着目しその得点から減点群と満点群に分類しFIM合計点との関係を見ると、満点群(112.7±9.6点)の方が減点群(94±20点)より高得点であった。さらにFIM各項目では更衣・移動で満点群(更衣上6.6±0.9点、更衣下6.5±1.1点、移動6.4±0.5点)の方が減点群(更衣上5±1.9点、更衣下4.6±2.2点、移動4.5±2.1点)より点数が高かかった。一方、立方体透視図模写課題と10m歩行時間は関係を認めなかったが、立方体透視図模写課題と線分二等分試験では満点群(8%)に比べ減点群(45%)で1㎝以上の偏位を認めた対象者が多かった。しかし線分二等分試験とFIMには関係を認めなかった。
【考察】 立方体透視図模写課題は、線分の向き、その中でも奥行き線に着目する事が重要で、その結果は10m歩行時間等で評価される量的要因よりも、FIMで評価される介助量や自立度等の質的要因に反映される傾向が確認できた。一方、線分二等分試験とADLに関係が認められなかったが、立方体透視図模写と線分二等分試験の間には有意な関係が認められた事から、線分二等分試験のみでは症状の検出が出来ない軽症例等の患者に対しても検出可能となる可能性があり、線分二等分試験の補助的検査としても用いる有用性が示唆された。
【まとめ】 構成イメージ能力は更衣や移動に影響し、歩行では歩行時間等の量的要因よりも自立度や介助度等質的要因の評価に影響する事が確認された。立方体透視図模写を行う際には、奥行きを示す斜め線に注目することが重要である事が確認できた。立方体透視図模写は線分二等分試験の補助的検査としての有用性が示唆された。

著者関連情報
© 2012 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top