東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-21
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一般口述
当院における肩関節鏡視下手術患者の病態別にみた肩関節機能の検討
*池田 潤一天木 充飯田 文彦堀内 統
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抄録

【目的】 肩関節周囲炎に総称される肩関節の痛みの原因として肩峰下インピンジメント症候群、肩関節拘縮、腱板断裂など様々な病態が存在する。臨床症状として疼痛、関節可動域制限、筋力低下、ADL障害などが挙げられ、これらを定量化する目的で機能評価を点数化して用いることも多い。数値化することで、より客観的な患者評価が可能となり、治療効果の判定や問題点の把握に役立つ。当院では保存療法に抵抗する難治性の肩関節疾患に対して肩関節鏡視下手術を施行しており、術前の患者評価に日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア)を実施している。今回、手術前後に実施したJOAスコアを異なる病態ごとに比較検討し、各病態の特徴について若干の知見を得たので報告する。
【方法】 対象は2011年1月より2012年5月に当院で肩関節鏡視下手術を受け、術後3カ月以上を経過した37例40肩(男性21名、女性16名、62.1±9.2歳)である。全例、術翌日より当院の術後スケジュールに沿って理学療法を実施した。内訳は肩峰下インピンジメント症候群8肩(男性4名、女性4名、62.1±6.4歳、以下インピンジ群)、肩関節拘縮14肩(男性7名、女性7名、57.7±9.8歳、以下拘縮群)、腱板断裂18肩(男性10名、女性7名、65.5±8.4歳、以下腱板断裂群)である。術前および最終調査時のJOAスコアの疼痛、総合機能、日常生活動作、可動域、合計点数について比較検討した。統計学的解析として手術前後はMann-WhitneyのU検定、3群間はSteel-Dwass法を用いて比較した(P<0.05)。
【結果】 JOAスコアの合計点数は、術前はインピンジ群65.3±11.3点、拘縮群55.8±10.3点、腱板断裂群61.8±12.0点で、最終調査時はインピンジ群85.6±4.6点、拘縮群79.1±7.8点、腱板断裂群73.5±9.5点であった。腱板断裂群は他の2群に比べ、疼痛、総合機能、日常生活動作、可動域の全てのスコアで改善が小さかった。
【考察およびまとめ】 近年、肩関節鏡視下手術は急速に普及している。その特徴は直視下手術に比べ患者負担が少なく、術後早期の機能回復と社会復帰が期待できることである。一方、病態により回復の程度に差が出ることも予測される。今回調査したJOAスコアでは合計点数の改善はインピンジ群、拘縮群で大きく、腱板断裂群で小さかった。肩峰下インピンジメント症候群や肩関節拘縮に比べ腱板断裂は肩関節鏡視下手術後の機能回復に時間を要すことが示唆された。とくに総合機能や可動域のスコアは他の2群と比べ、改善が小さく、筋機能や関節可動域(とくに回旋)の回復が十分でないことが推測される。これは術後の外固定や修復腱板のhealingの問題が影響するためと考えられ、リスク管理を踏まえた上で時期に応じた段階的な理学療法の必要性が伺える。このように術前および術後評価は治療効果の判定および問題点の把握において重要であると考えられる。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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