東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-23
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一般口述
青少年野球選手とサッカー選手の股関節可動域の特徴
*竹中 裕人水谷 仁一鈴木 達也大家 紫清水 俊介伊藤 岳史筒井 求岩堀 裕介
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抄録

【背景】 青少年スポーツ選手において、傷害予防、パフォーマンスの視点から柔軟性は重要である。このような視点から青少年野球選手の肩関節、股関節の柔軟性は重要であるが、青少年野球選手の股関節内旋可動域に着目した研究は少ない。
【目的】 股関節90°屈曲位内旋可動域(以下:股関節内旋)について、青少年野球選手とサッカー選手を比較し、野球選手の特徴を調査すること。
【方法】 メディカルチェックで投球障害を認めない野球選手106人(以下野球群:小学生52人・中学生27人・高校生27人)とサッカー選手52人(以下サッカー群:小学生14人・中学生15人・高校生23人)を対象とした。
 測定項目は、軸脚とステップ脚(サッカー群:利き足側と非利き足側)の股関節内旋可動域とし、ゴニオメーターを用い2人1組で計測した。
 統計学的解析は、まず、軸脚とステップ脚の比較を、t検定を用いて行った。この2群に有意な差はなく、また、先行研究を参考に、以下の対象をステップ脚のみとした。ステップ脚の2群間の年代別の比較を、t検定を用いて行った。2群内の年代間の比較をone-way ANOVAを行い、多重比較検定としてbonferoni法を用いた。次に、年齢と可動域の関連度をみるためにSpearmanの順位相関係数を求めた。
【結果】 年代別に2群間の比較を行った。高校生では、サッカー群に比べ、野球群で有意な可動域の減少を認めた(p<0.01)。小学生・中学生において、野球群とサッカー群に有意な差は認めなかった。
 次に、2群内の年代間の比較を行った。野球群では、小学生・中学生に比べ、高校生で有意な可動域の減少を認めた(p<0.01)。サッカー群では各年代間に有意な差は認めなかった。
 最後に、年齢と可動域との相関を検討した。野球群(r=-0.52, p<0.01)に強い負の相関を認め、サッカー群(r=-0.24)には相関を認めなかった。
【考察】 股関節内旋可動域について、米国プロ野球選手(投手)のステップ脚の可動域の減少が報告されている(AJ. Robb, AJSM, 2010)。今回の対象では、軸脚とステップ脚の有意な差は認めなかったが、先行研究を参考に、ステップ脚に着目した。
 野球群は、サッカー群に比べ高校生で股関節内旋可動域の減少を認めた。また、野球群内では、小中学生間で可動域の変化はなかったが、高校生で股関節内旋可動域の減少を認めた。加えて、年齢と股関節内旋可動域に強い負の相関を認めた。一方、サッカー群において、年代別に差を認めたかった。以上の結果から、野球群の高校生以降で股関節内旋可動域の減少が生じていることが分かった。
 股関節内旋可動域減少は、投球動作における骨盤回旋運動を低下させ、パフォーマンスを低下させる可能性も報告されている。この股関節内旋減少が、骨性要素、筋を含めた軟部組織要素のいずれが主体なのか。なぜ、野球選手の高校生において減少したのかについて、今後追跡調査が必要である。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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