Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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化学で拓く糖タンパク質品質管理
Kiichiro Totani
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2010 年 22 巻 128 号 p. 296-307

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抄録

小胞体内腔に導入される新生ポリペプチドは、Asn-Xaa-Ser/Thr モチーフのアスパラギン残基に高マンノース糖鎖修飾を受け、その糖鎖プロセシングがタンパク質品質管理に重要な役割を果たすことが知られている。このプロセスは多くのレクチン、シャペロン、糖鎖プロセシング酵素が複雑に関与して成り立っている。例えば、カルネキシン (CNX) やカルレティキュリン (CRT) はモノグルコシル化高マンノース糖鎖を認識する分子シャペロンである。グルコシダーゼIIはふたつの独立したグルコース切断活性を有し、変性糖タンパク質をCNX/CRTへ受け渡してタンパク質の配座を修正後、これを回収する機能をもつ。またUDP-グルコース:糖タンパク質グルコース転移酵素 (UGGT) は折り畳み途上のタンパク質に結合した高マンノース糖鎖のみをグルコシル化し、糖タンパク質をふたたびCNX/CRTに受け渡す折り畳みセンサーである。最近の研究によってこれらの糖鎖認識タンパク質の性質は明らかになりつつあるが、ほとんどの研究は構造が不均一な生物試料由来のオリゴ糖を用いて成されている。我々はより厳密な理解を目指して、まずタンパク質品質管理に関わる高マンノース糖鎖の網羅的な化学合成を行った。また人工糖タンパク質の創製研究を通して、UGGTの非ペプチド性基質を初めて開発した。これらの合成糖鎖プローブを駆使して、UGGT、グルコシダーゼII、CRTの定量的な活性や特異性の評価を行った。

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© 2010 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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