抄録
日本ケミカルリサーチ株式会社は1975年に創立され、ヒトの尿、血液、母乳等より生体成分由来のタンパク質を単離・精製し、医薬品原体として提供してきた。ヒト尿由来ウロキナーゼはその成功例であり、現在も製造販売しているが、80年代には、その他いくつかのタンパク質の医薬品開発を行い、承認申請した。しかしながら、CJD事件等の影響もあり、ヒト/動物由来製品における「未知の病原体からの安全性確保」が要求されたが、回答困難であったことから、いずれも承認取得に至らなかった。結果、当社は研究開発方針を遺伝子組換え技術を用いる医薬品に転換した。種々の経験を基に、試行錯誤した結果、先行品と同様rHuEPOのアミノ酸骨格に翻訳されるDNAを組み込んだベクターを挿入した宿主のCHO細胞について、rHuEPO高生産性で、かつ動物血清フリーでも増殖する浮遊性種細胞のマスターセルを徹底的にスクリーニングした。最も注力したのは先行品と極めて類似した糖鎖構造を有し、同程度の生物活性を有するEPO産生株を選び出したことである。その結果、無血清培地による培養拡大工程および動物由来成分を用いない精製工程を確立し、エリスロポエチン(EPO : JR-013)の開発を進めた。JR-013の開発においては、CMCおよび非臨床試験において先行品エポエチンαとβと比較し、その類似性を確認したのち、患者での単回投与比較試験を実施し、エポエチンαとの二重盲検比較臨床試験ならびに1年間の長期試験を行った。その結果、JR-013とエポエチンαの類似性(同等性)が確認されたことから製造承認申請を行った。当社が申請した後、日本のバイオ後続品ガイドラインが公表された。筆者らの実施した臨床開発の内容がそれに沿うものであったことから、当社のEPO、エポエチンカッパ(INN)は2010年1月にバイオ後続品として製造販売承認を取得した。