Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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アルギニンに富む塩基性ペプチドの細胞内への取り込みと膜結合型プロテオグリカンの寄与
Ikuhiko NakaseYoshimasa KawaguchiMotoyoshi NomizuShiroh Futaki
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2015 年 27 巻 155 号 p. 81-88

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抄録

細胞透過ペプチド(cell-penetrating peptides, CPPs)を用いた細胞内送達は、投与方法の簡便さと医療への応用の可能性から、大きな関心を集めている。ペプチド・タンパク質、核酸、リポソーム、ナノ粒子などの種々の生理活性分子を細胞透過ペプチドと化学的に架橋するか、あるいは安定な複合体を形成させ、これらの架橋体や複合体を単に培養液に添加することにより、効率よく細胞内に導入されたことが報告されている。異なる物性を持つ種々の膜透過ペプチドが報告されているものの、アルギニンを多く含む細胞透過ペプチドは最も汎用されるものの一つである。ヘパラン硫酸プロテオグリカンなどの膜結合型プロテオグリカンは、アルギニンが帯びる正電荷とグリコサミノグリカンの持つ負電荷の間の静電的相互作用により細胞表面に濃縮することで、アルギニンに富む細胞透過ペプチドとそれにより細胞内に導入される積み荷分子の細胞内への取り込みを容易にしている。アルギニンを多く含む細胞透過ペプチドと膜結合型プロテオグリカンとの相互作用はマクロピノサイトーシスと呼ばれる液相エンドサイトーシスを誘起することによっても、アルギニンに富む細胞透過ペプチドと積み荷分子の細胞内への取り込みを促進する。

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© 2015 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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