Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
二枚貝イガイ科にみるβ-トレフォイル骨格レクチンの新系図
藤井 佑樹マルコ ジェルドールイムティアジ ハサン小出 康裕松﨑 理佐池田 茉由スルタナ ラジャ小川 由起子SM・アベ カウサル大関 泰裕
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2018 年 30 巻 177 号 p. J155-J168

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抄録

世界の沿岸に棲み、食材や環境指標動物として重要な二枚貝イガイ科ムラサキイガイから、新たなレクチン「マイティレック(MytiLec)」が発見された。それは、α-ガラクトシドであるグロボトリオース(Gb3)糖鎖と結合し、Gb3を持つリンパ腫細胞に投与するとプログラム細胞死を誘導した。このレクチンは、これまでに知られていなかった新たな一次構造から作られていたが、その立体は、レクチンの代表一次構造家系のひとつ「R-型レクチン」の立体であるβ-トレフォイル(三つ葉)骨格を成していた。マイティレックの類似遺伝子を探してゆくと、イガイ科と一部の軟体動物門二枚貝、そして腕足動物門に限定して存在し、ここに「マイティレクチン」という新たなタンパク質の一次構造家系の存在していることが判明した。一方、イガイ科にはR-型レクチン家系も存在した。なぜ二枚貝には、同一の骨格を持つ、異なる二つのレクチン家系が存在したのか、その理由を推論したい。マイティレックの持つ抗がん作用を創薬へ活かす目的から、立体をコンピューターで解析し祖先アミノ酸配列を推定した。それを改良して、マイティレックよりも対称性と安定性に冨み、糖鎖結合性を同じくする人工レクチン「ミツバ(Mitsuba)-1」が造られた。ミツバ-1の立体構造と作用とをマイティレックのそれらと比較して、マイティレクチン家系の持つ糖鎖を介した細胞制御のしくみを考察する。

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© 2018 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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