Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
フコース誘導体を用いたフコシル化糖鎖の検出と改変
木塚 康彦
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2019 年 31 巻 178 号 p. J1-J6

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抄録

糖の誘導体(アナログ)は、糖鎖のプローブや糖鎖合成の阻害剤として用いることができる。本稿では、その中でもフコースのアナログに着目し、これまで開発されたフコースのアナログと、筆者らが最近開発したアナログの作用およびその応用の可能性について記したい。フコースを含有する糖鎖は、発生、免疫、神経機能に加え、炎症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、がんなどの疾患にも関わり、その検出プローブや阻害剤の開発が望まれている。これまで、プローブや阻害剤として機能するフコースのアナログがいくつか開発されているが、検出感度の低さ、毒性、阻害効果の弱さ、といった問題点があった。最近筆者らは、高感度、低毒性でフコシル化糖鎖を検出できるプローブ、7-アルキニルフコースを開発した。本プローブは、既存のプローブと比較して様々なフコース転移酵素のよい基質となり、効率的に糖鎖に取り込まれ、高い感度で糖鎖を検出する。また、6-アルキニルフコースと呼ばれるアナログがフコシル化糖鎖の強い阻害剤であり、がん細胞の浸潤能抑制効果を持つことが明らかになった。その作用のメカニズムは、GDP-フコースの生合成酵素であるFXの特異的な阻害であることもわかった。これらの結果は、フコースのアナログが様々な研究ツールとなる可能性を示しており、糖アナログを用いた今後の糖鎖ケミカルバイオロジーの発展が期待される。

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© 2019 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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