2019 年 31 巻 181 号 p. SJ71-SJ73
細胞膜上にはグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)と呼ばれる糖脂質によって修飾された一群のタンパク質が存在する。これらのタンパク質はGPIアンカー型タンパク質(GPI-APs)と呼ばれ、哺乳動物ではおよそ150種類のタンパク質が存在する。GPI-APsの特徴として、1)細胞膜上でスフィンゴ脂質やコレステロールなど特定の脂質と膜ドメインを形成すること、2)細胞膜上からGPI部分で切断を受け、遊離すること、等が挙げられる。1988年にGPIアンカーの完全構造が決定されて以降、生合成経路や構造変化に関わる遺伝子が明らかにされてきた。近年、GPIの構造変化は、GPI-APsの品質管理、輸送や局在を調節していることが分かってきた。さらに、GPIアンカー型タンパク質を遊離させる酵素もいくつか同定されている。本稿では、最近のGPIアンカーの構造化学と切断メカニズムについての知見を紹介する。