Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
未分化細胞除去とがん治療のためのレクチン–薬剤複合体の開発
舘野 浩章
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2019 年 31 巻 183 号 p. J119-J125

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抄録

我々はレクチンアレイや質量分析を用いてヒト胚性幹細胞(ES細胞)やヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の表層糖鎖を精密分析した結果、ヒト体細胞と比べてヒトES/iPS細胞ではHタイプ3(Fucα1-2Galβ1-3GalNAc)構造が高発現していることを明らかにした。更に本構造を認識するrBC2LCNレクチンに緑膿菌由来外毒素を薬剤として融合させたレクチン–薬剤複合体(lectin–drug conjugate, LDC)を用いてヒトES/iPS細胞を選択的に除去する技術を開発した。最近、このrBC2LCNレクチンが、膵がん幹細胞様の性質を持つ膵がん細胞株に対しても強く結合することを見出した。rBC2LCNレクチンを用いて臨床膵がん組織を染色した結果、69人の患者由来の膵がん組織全てに反応性を示すことがわかった。そこで、LDCを未分化細胞除去のみならず、抗がん剤としても利用できるのではないかと考えた。LDCを膵がん細胞株に作用させると、半数効果濃度(LD50)が1.04 pg/mL(0.0195 pM)と強力な抗腫瘍効果を示した。更に面白いことに、このLDCをマウスの腹腔や静脈に投与することにより、様々な膵がん移植マウスモデルにおいて劇的な抗腫瘍効果を得ることができた。本総説では、LDCの開発と膵がん治療への応用についての最新の知見ついてご紹介したい。

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© 2019 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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