Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
鳥類の糖鎖解析から見えてきたこと
鈴木 詔子
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2020 年 32 巻 185 号 p. J7-J12

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抄録

多様な構造、分布、性質をもつ糖鎖が存在する理由を解明するためには、多様な方向から研究を進める必要がある。ヒトには発現していない一風変わった構造をもつ糖鎖であっても、実は自然界にはありふれて存在しているかもしれない。現在のヒトの持つ糖鎖の構造も、生物の進化・多様化の歴史から再考すれば、違った側面から理解できる。Galα1-4Galをもつ糖タンパク質は、当初、ハトや一部の生物にのみ発現が報告されていた。しかし、鳥類の系統発生と比較すると、現生鳥類の95%を占める主要グループ(Neoaves)に属する鳥類では、その多くにこの糖タンパク質糖鎖が発現している。この糖鎖抗原を生成するα1,4-ガラクトース転移酵素のcDNAをハトの肝臓からクローニングした。得られた配列を基にDNAデータベースを用いることで、魚類から鳥類・哺乳類に至る脊椎動物の進化においてこの糖鎖遺伝子がどのように獲得または喪失されたか推測することが可能になった。ヒトゲノムプロジェクト後にも引き続き膨大化している全ゲノム解析のデータは、留まるところを知らず対象となる生物種数と範囲の拡大を続けている。飛躍的に向上した糖鎖の解析技術と相俟って、生物の進化の過程で多様な糖鎖の獲得されたメカニズムとその役割を、糖鎖構造とゲノムの両面から大規模に探る新たな研究領域が開拓される日は近い。

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© 2020 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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