2020 年 32 巻 186 号 p. J35-J41
インフルエンザウイルスの膜表面に存在するノイラミニダーゼ(NA)は、シアリダーゼ活性を示すウイルスの増殖に重要なタンパク質であり、治療薬の標的にもなっている。著者らはシアリダーゼ活性を蛍光イメージング可能な基質BTP3-Neu5Acを開発し、シアリダーゼ活性の蛍光イメージングによるインフルエンザウイルス検出法を開発し、薬剤耐性インフルエンザウイルスの検出分離法への応用を展開してきた。水溶性のBTP3-Neu5Acはシアリダーゼによる加水分解を受けることでシアル酸が遊離し、フリーのBTP3が生成、周辺に沈着することでシアリダーゼ活性の蛍光イメージングを可能とする。インフルエンザウイルスNAのシアリダーゼ活性を蛍光イメージングすることでウイルスや感染細胞の簡便で迅速な検出が可能となる。さらに近年問題となっている薬剤耐性インフルエンザウイルスは、シアリダーゼ阻害剤に対する耐性変異を獲得したウイルスであり、シアリダーゼ阻害剤存在下でも活性を保持することから、著者らはBTP3-Neu5Acによって薬剤耐性インフルエンザウイルスを選択的に検出することができると考え、薬剤耐性インフルエンザウイルスの選択的な検出分離法の確立を行った。BTP3-Neu5Acによる薬剤耐性インフルエンザウイルスの検出分離技術は基礎研究分野および衛生臨床分野での有用なツールとして今後広く利用されることが期待される。