Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
マスト細胞の顆粒複合体:糖鎖の助けによる天然の送達システム
東 伸昭
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2021 年 33 巻 192 号 p. J27-J32

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抄録

マスト細胞はその巨大な細胞内分泌顆粒によって特徴づけられるが、この顆粒内にはグリコサミノグリカン、すなわちヘパリンや高硫酸化コンドロイチンが大量に蓄積されている。顆粒複合体は一種のタンパク質–高分子電解質複合体であり、グリコサミノグリカン、プロテアーゼ、生理活性アミンや他の様々なメディエータから構成されている。近年の知見から、マスト細胞から放出された後の顆粒複合体の運命が多様であることが示唆されている。すなわち複合体の構成物は、血流に乗る、マスト細胞近傍の結合組織に留まる、上皮・間質の細胞や免疫細胞に取り込まれて獲得免疫の引き金や組織ホメオスタシスの維持に関わる、リンパ流に乗って所属リンパ節に運ばれる、などである。これらの運命の選択は顆粒複合体内の糖鎖により、特にヘパラナーゼの切断によって加工されたヘパリンにより大きく影響される。本総説では、マスト細胞の顆粒複合体の構成に関する最近の進歩に焦点を当て、特に顆粒内ヘパリンのプロセシング、顆粒複合体が放出された後の運命と役割、免疫調節物質としての役割の可能性、またこの複合体を模倣した人工的な送達システムの構築の試みについて述べる。さらにこれらの機能における糖鎖の関与についても議論する。

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© 2021 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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