Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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糖転移酵素遺伝子の進化史
Mika KanekoShoko NishiharaHisashi NarimatsuNaruya Saitou
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2001 年 13 巻 70 号 p. 147-155

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抄録

近年、ヒトや線虫などのゲノム計画が急速に発展してきている。その結果、これらのゲノム配列の中からたくさんの新規糖転移酵素遺伝子が見いだされるようになった。一体どのようにして糖転移酵素は、進化の過程でその遺伝子ファミリーの構成員を増やしてきたのだろうか? 糖転移酵素遺伝子の進化の道筋を辿る目的で、分子進化学的な手法を用いて解析を行った (1)。我々は55種類の糖転移酵素遺伝子を使って解析を行い、主にN-glycan とO-glycan を合成する糖転移酵素に関して論じた。系統樹の解析によって、糖転移酵素遺伝子が遺伝子重複を通してその遺伝子数を増やしていったことが明らかになった。更に、各遺伝子の分岐年代を推定したところ、糖転移酵素遺伝子が遺伝子重複とゲノム重複でその遺伝子数を増やしたことが、さらに、支持された。また、進化速度を比較したところ、糖転移酵素遺伝子は他の遺伝子より進化速度が遅い傾向にあり、遺伝子ファミリー内でばらつきが認められた。これらの結果から、糖転移酵素遺伝子が遺伝子重複やゲノム重複で遺伝子数を増やしたことにより、機能的制約がゆるみ、アミノ酸変異が蓄積して酵素活性に多様性をもたらされた、と推察される。本稿では、これらの解析を通して得られた「糖転移酵素遺伝子の進化史」のエッセンスを述べる。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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