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Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Vol. 16 (2004) No. 88 P 63-85

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http://doi.org/10.4052/tigg.16.63


ガラクトースやシアル酸はあたかも細胞表層を彩る「認識糖」として機能している。しかし、我々が何となく感じているこの種の「感覚」にはどれ程の科学的根拠があるのだろう。また、多彩を極める様に表現されることの多い糖鎖であるが、単糖として我々が通常扱うのはせいぜい十種類程度、糖鎖にしてもせいぜい数百種類程度である。にもかかわらず、その説明はどこにも記されていない。ここに、糖の本質に対する理解の欠如がある。核酸やタンパク質とならび、糖鎖を「グライコーム」という第3の生命鎖の総体として把握するには、我々にはもう一つ越えなければならない壁、すなわち糖の起源に関する問題がある。本稿では糖の化学構造と糖化学反応、糖のバリエーションと生合成経路との関連、さらに糖鎖認識タンパク質 (レクチン) の比較解析などを通し、糖の誕生と生命進化の謎解きに挑む。本論ではフルクトース・グルコース・マンノースを生命発生以前に存在した「起源三糖」と位置づけ、その対局として他の糖群を生物代謝系の発達後に登場した「後生糖」とする。すなわち、ガラクトース、キシロース、アラビノース、L-フコース、L-ラムノース、各種ジデオキシ糖、シアル酸、ウロン酸、さらにはリボースでさえも、上記起源三糖を基材として生命が様々に模索創造した「ブリコラージュの産物」に他ならない。しかし、ガラクトースがグルコースやマンノースと同等の熱力学的安定性を有する「許容糖」でありながら、起源三糖とは峻別される「経歴」をもつことは殆ど指摘されていない。このことがガラクトースに認識糖としての希有の資質を与えたのではないか。

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