Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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リュードカン: その分子構造と機能
小嶋 哲人Robert D. Rosenberg大貫 洋二
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1995 年 7 巻 37 号 p. 385-403

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抄録
リュードカンはI型膜貫通型ヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、当初、血流の維持に重要な役割を果たす分子としてラット毛細血管内皮細胞から単離されている。我々がラット・リュードカンとラット・シンデカンをともに単離精製したところ、コアタンパクのSDSゲル電気泳動上での分子量はそれぞれ30kDaと50kDaであった。そして、それぞれのコアタンパクをコードするcDNAのクローンニングに成功した。ラット・リュードカンとラット・シンデカンのそれぞれのcDNAから予想されるアミノ酸配列は、細胞外領域は全く異っていたが、膜貫通領域と細胞内領域において高い相同性が認められた。そして、現在ではリュードカンはシンデカン・ファミリーの一つと考えられている。また、我々はヒトの染色体20q12上に遺伝子座を持つリュードカンのヒト分子cDNAのクローンニングにも成功した。リュードカンの発現実験において、cDNAにより発現させたエピトープ標識リュードカンは、内在性リュードカンと同様に抗凝固活性を持つヘパラン硫酸 (HSact) と活性を持たないヘパラン硫酸(HSinact) を有していた。HSactとHSinactはおよそ25~30kDaの分子量を持ち、全体的な糖組成は同じであるが、HSactではグルクロノシル3-O-硫酸化グルコサミン構造がHSinactよりも多い。エピトープ標識リュードカンが発現されて細胞内濃度が増加すると、おそらくHSact合成を制御する糖鎖生合成酵素の許容量を飽和してしまうことになる。さらに、エピトープ標識リュードカンの発現実験から、HS単独のリュードカンや、様々なHS/CS (コンドロイチン硫酸) 複合型、またはCS単独のリュードカン、といった様々なイソフォームが作られることが示された。これらの多様なリュードカン・イソフォームの産生は、それらが発現する細胞表面での分子の多機能性をもたらし、様々な異なった生物活性への関与を可能にしている。
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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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