抄録
本総説は、小胞体内腔において行なわれるアスパラギン結合型オリゴ糖鎖の生合成とプロセシングの過程、及びその糖タンパク質の正確な三次構造の獲得とその過程との関連を扱う。特に、UDP-Glc: 糖タンパク質グルコース転移酵素とグリコシダーゼIIにより触媒される糖タンパク質の一時的なグルコシル化が検出された研究として、トリパノソーマ原生動物において起こる反応に重点を置く。前者の酵素には、グルコシル化されていないタンパク質結合型Man7-9GlcNAc2からタンパク質結合型Glc1Man7GlcNAc2、Glc1Man8GlcNAc2及びGlc1Man9GlcNAc2の形成を触媒することにより、正確に折たたまれていないコンフォメーションを持つ糖タンパク質に糖鎖を共有結合的に付加させるという特徴的な性質がある。この酵素は小胞体の可溶性タンパク質であり、未変性のコンフォメーションではなく変性したコンフォメーションをもつタンパク質のドメイン (おそらく疎水性アミノ酸) と、大部分の糖タンパク質においては巨大分子プローブから隠されている内側のN-アセチルグルコサミンユニットを認識する。生体内において、グルコースユニットはグルコシダーゼIIにより除去される。糖タンパク質の折りたたみにおけるオリゴ糖鎖の影響についてと、同じ過程においてモノグルコシル化されたオリゴ糖鎖を認識する小胞体シャベロン (カルネキシンやカルレティキュリン) の役割について総説した。正確に折りたたまれなかった糖タンパク質は小胞体にとどめられ、そこでタンパク分解的に分解される。小胞体においてカルネキシン (とカルレティキュリン) とUDP-Glc: 糖タンパク質グルコース転移酵素が主な要素となる糖タンパク質折りたたみの品質管理を総説する。