Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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肝細胞増殖因子/散乱因子
構造、機能、グリコサミノグリカンによる制御
Louise RichardsonRalph H. SchwallThomas F. Zioncheck石原 雅之
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1996 年 8 巻 41 号 p. 167-182

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抄録

散乱因子 (SF) とも呼ばれる肝細胞増殖因子 (HGF) は、上皮-間充識細胞間相互作用における重要なパラクリン伝達分子である。この因子は間充識細胞によって分泌され、上皮細胞の増殖、移動、形態に影響を与える。この因子の多様な生物活性は、c-Metと呼ばれる高親和性チロシンキナーゼ受容体との結合 (Kd=0.1-0.5nM) とその活性化によって起こることが知られている。c-Met受容体は多くの上皮や内皮細胞によって発現されているが、間充識細胞には存在しない。c-Metに加えて、HGF/SFは、ヘパリンや細胞表面ではヘパラン硫酸プロテオグリカンとも結合する。この親和性はc-Metの場合と比べて10倍弱い (Kd=1-5nM)。ヘパラン硫酸由来オリゴ糖断片のサイズや電荷密度はHGFとの結合親和性を決める要素であるが、それはFGFのものとは異なることが知られている。細胞培養において可溶性のヘパリンやヘパリン様分子をHGF/SFとともに添加すると、増殖因子の多量体化を引き起こし、細胞増殖促進活性を増強する。最近のデータは、HGF/SFそしてNK1やNK2と呼ばれる削除型異性体への細胞の反応性は細胞表面型ヘパラン硫酸プロテオグリカンによって決まることを示している。これらのデータを基にして、私たちは、ここで繊維芽細胞増殖因子の場合と類似のモデルを提案する。このモデルでは可溶性ヘパリン様分子 (あるいは細胞表面型ヘパラン硫酸プロテオグリカン) が安定なHGF/SFの多量体を形成させ、続いてc-Metレセプターの二量体化や細胞内シグナル伝達を引き起こしていく。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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