Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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サポシンとその前駆体、プロサポシン
多機能性糖タンパク質
Masao HiraiwaYasuo Kishimoto
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1996 年 8 巻 43 号 p. 341-356

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抄録

スフィンゴリピドは高等動物の細胞膜の普遍的な構成成分で、特に、神経系に高濃度で存在している。それらは、膜の外側にむき出されるようにして存在し、多様な生命現象の本質にキー分子として関与しているものと推定されている。それらの持つ決定的な機能に関しては未だ明確な答えが得られてはいないが、それらの代謝については、いろいろな側面からの解析がなされている。スフィンゴリピドは、高等生物の細胞では、リソソームに存在する一連の加水分解酵素の作用によって代謝分解される。それら加水分解酵素のうちの一つでも欠損した場合には、組織にスフィンゴリピドの蓄積を引き起こし、重度の神経障害を主徴とした、いわゆる、スフィンゴリピドーシスを発症する。過去30年の間に、いくつかのスフィンゴリピド加水分解酵素が、耐熱性の非酵素性タンパク質、スフィンゴリピド活性化タンパク質、の助けを必要とすることが指摘された。そのようなタンパク質として4種のタンパク質、サポシンA-D、の存在が知られている。それらは分子量12-15kDaの糖タンパク質で、お互いに高いアミノ酸配列の相同性を持っている。重要なこととして、各分子中に存在する6個のすべてのシステイン残基、1カ所のN-グリコシレーションサイト、そして、タンパク質のターン構造に影響を与えるプロリン残基はほぼ完全に保存されている。すべてのシステイン残基は分子内ジスルフィド結合に与っており、サポシンの構造をコンパクトかつ異常なまでに安定化している。また、その結果として、サポシン分子は両親媒性の構造を獲得している。すべてのサポシンは単一の前駆体タンパク質であるプロサポシン上に別々のドメインとしてコードされている。本総説では、サポシンについて、その発生、スフィンゴリピドの加水分解に対する活性化因子としての機能、および、リピド転移タンパク質としての機能について概説する。さらに、サポシンの持つ歴史、現在までに知られている機能、そしてサポシン研究の展望についても言及する。また、最近見い出されたプロサポシンの神経栄養因子としての機能についても概説する。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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