学術の動向
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コロナ禍と現代社会 ─人文学・社会科学の視点から─
「見捨てられるいのち」をめぐる倫理問題
島薗 進
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2021 年 26 巻 12 号 p. 12_42-12_45

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抄録

 新型コロナウイルス感染症の流行で「医療崩壊」が危惧される事態の下で、医療措置を受けることができないで死に至る例が多数生じた。「自宅療養」や介護施設で医療が受けられずに死亡する例、人工呼吸器の使用の辞退を余儀なくされる例などである。受けることができれば助かるはずのいのちだが、それができない。「見捨てられる」ように死亡するという例であり、新型コロナウイルス感染症によって生じた悲しみや恐怖のなかで特徴的なものであった。これに対する応答の一つは、これを「トリアージ」の一つとして捉え、その手順を提言として示すことで困難に向き合おうとすることだった。しかし、これに対しては、障害者や難病患者などから厳しい批判が寄せられた。助けるいのちと見捨てるいのちを選別する基準があるとする前提は合意を得られない。このような事態を避けることにこそ最善をつくすべきである。

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