学術の動向
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コロナ禍と現代社会 ─人文学・社会科学の視点から─
美術とパンデミック
宮下 規久朗
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2021 年 26 巻 12 号 p. 12_58-12_62

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抄録

 コロナ禍の現在、かつてのパンデミックに際して美術がどのように反応し、機能してきたかを振り返る機会となった。西洋では14世紀にペストが人口の三分の一を奪い、中世文化の繁栄を終わらせた。疫病の守護聖人や「慈悲の聖母」への信仰がさかんになったほか、ミースの古典的研究によれば、このときイタリアでは禁欲的な宗教美術が隆盛して大きな様式的変化が見られた。17世紀にもイタリアで大きなペストの流行があり、美術の様式変化こそ促さなかったものの、イタリア各地の美術に大きな痕跡を残した。ヴェネツィアではロンゲーナのバロック建築、ローマではプッサンの歴史画、ナポリではプレーティによる城門の聖母壁画が生まれた。聖母は中世以来、疫病から保護してくれる存在としてつねに信仰を集め、バロック時代にもますますさかんに表現された。パンデミックに際して、美術はこうした信仰を具現化したものとして求められ、大きな役割を果たしたのである。

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