本稿は「数学とジェンダー」に関して、この20-30年間の変化を含め最新の動向や展望を次の三つについて述べるものである。①数学教育の研究や国際的な学力調査に見る算数・数学の男女差の動向、②算数・数学教科書の動向、③意識にないものを意識化させる手法の具体化。
その主な内容は次の通りである。①数学教育におけるジェンダーの問題は、国や文化、階層や人種などの「公平(equity)」の中で議論されるようになってきている。数学得点の男女差は小中でなくなっているが、数学に対する態度には男女差がある。日本の中学校数学の女性の先生は少ないままである。②算数・数学教科書は「主体的・対話的で深い学び」の文脈に変わっており、イラストの男女の割合や役割が改善され、数学を使う仕事に関わるエッセイに女性が登場している教科書もある。③内閣府男女共同参画局による「指導者用啓発資料」(2021.3)は、今後の改善を促す第一歩と期待できる。