2021 年 26 巻 7 号 p. 7_30-7_35
初等・中等教育段階の理科教育が、女性の理工系人材の育成や女子の理工系への進路選択の抑制要因の一つになっている。理科学力については、男女間に明瞭な差は見られないものの、理科学習に対する意識や態度については、中学校段階から女子の方が男子よりも消極的あるいは否定的になり、理科離れが顕著に表れる。このような状況の原因となる理科や自然科学研究に対するジェンダー・ステレオタイプは、理科教育にも潜在的カリキュラムとして浸透し、気づかぬうちに女子の理科離れを永続させてしまう。理科学習への女子の意識と態度を改善し、理工系への進路選択を促進するためには、学校外からの支援だけでなく、学校の理科教育そのものの変革が必要であろう。その変革とは、ジェンダーに関わる潜在的カリキュラムの発見と是正を中心とした研究の蓄積、理科授業への実践的な介入研究、ジェンダーの観点からの教師教育・教員養成、理科におけるキャリア教育の推進などが考えられる。