環境行政、特に化学物質対策や水・大気等の環境汚染対策においては、リスク評価の際に、毒性や生態毒性に関する知見が重要な役割を果たす。PM2.5のように広く存在する汚染物質について環境基準を設定するような場合は、疫学知見が重視されるが、それが単なる相関関係なのか因果関係なのかについて判断する際には、毒性学知見に基づく影響メカニズムの検証が必要になる。他方、有害物質について水質の環境基準を決める際には、毒性試験や生態毒性試験の結果に基づく有害性評価により評価値(TDI(耐容一日摂取量)、PNEC(予測無影響濃度)など)が算出され、環境モニタリング等による曝露評価の結果と比較して、必要があると判断されれば基準値が設定され、対策が検討されることになる。環境行政の中では毒性学知見(生態毒性を含む)は政策判断の際の一つのピースにすぎないが、重要度は非常に高く、地味な「黒子」ではあるが大切な役割を果たし続けて欲しい。