2021 年 26 巻 8 号 p. 8_93-8_96
本声明はGサイエンス学術会議による共同声明であり、今後の健康危機対応に向けてG7諸国がより高水準の「データレディネス(対応力)」を実現する必要性について、同学術会議の見解を表明するものである。
データは情報交換のための通貨のようなものであり、健康に関する知識の蓄積と対応の促進という役割を果たす。新型コロナウィルス感染症(Covid-19)が健康・生活に大きな被害をもたらす中、世界中の人々はかつてないほど積極的にデータおよび情報に関与してきた。G7諸国はパンデミックの収束にあたり、世界共通の公共財として健康に関するデータを構築することを提唱すべきである。
このデータ構築を遂行するには、G7諸国をはじめとする国々が協力して以下のことに取り組む必要がある。それは、健康危機に関するデータを確実に安全に共有・利用するための原則に基づくガバナンスシステムの導入、健康危機に関するデータの公正利用のための原則に基づくプライバシー保護に配慮した手法を遂行するための運用システム・インフラ・技術の構築・実用化、あらゆるレベルの人々(一般市民から健康関連の専門家まで)を対象とした信頼できる正確なデータ利用に必要なスキル・能力の養成、である。
Covid-19への各国の対応から学ぶ機会が今まさに存在している。G7諸国はこのタイミングをとらえて、健康危機に関する信用に値し信頼のおける国際データシステムの構築を推進するべきである。このシステムを構築する方法については、G7諸国が共同で健康危機データに関する委員会を設立し合意をとるべきである。
Covid-19対応において利用されたデータの共有手順を策定することが、当委員会の初期の目標となるだろう。G7諸国をはじめとする国々はここで策定された手順の長期使用を導入してもよいだろう。この委員会は、G7諸国だけでなく、また健康危機対応に限らず、世界全体の健康を支える信頼できるシステムを構築するために有意義な公開討論を実施すべきである。