水の研究は、物理学、化学、生物・生態学、地球科学、地理学、工学、農学、林学、医学、人文社会科学の広い分野にかかわっているが、中でも、人間活動への応答も含めて地球上の水の循環を研究する学問を水文学(すいもんがく、hydrology)と呼ぶ。水の禍を最小限に抑えつつ水の恵みを最大限に受けたいという社会的な要請に応える実学としての側面も以前には強く、「忘れられた科学」とさえ揶揄された水文学だが、様々な側面で水循環抜きには語れない地球規模課題の解決に向けた学術の興隆に伴い、今や21世紀の地球科学に欠かせない存在となり、科学と社会が垣根を越えて協業を進めようという超学際(transdisciplinary)研究の一翼を担っている。グローバル水文学の視点から、過去30年の水文学の発展を振り返り、今後のさらなる発展の機会について論じる。