人と社会と自然の基盤となる「水」は、貴重な資源であると同時に、環境そのものでもある。工業化、都市化、緑の革命を経て人新世へ至る中で起きた、より遠い水・より遅い水への水利用の拡大は、食料貿易によるwater footprintやその結果としての地下水減少などを通して、地球上の水の時空間的つながりの拡大と、水問題が複合的地球環境問題であることを認識させた。現在の水研究は、自然科学的研究に限らず、人文・社会科学的研究など多様な研究が進められており、文化の多様性と生物多様性につながる水の多様性研究は、生存基盤としての水に関する基礎となる概念である。また、水を通した他地域への依存性は、持続可能性を評価する上でも重要である。そして水の被害と恩恵のバランスを示す社会的閾値は、水の資源的側面と環境的側面の研究、均質性と多様性に関する研究とともに、人と社会と自然をつなぐ水に関する総合的研究として重要である。