2022 年 27 巻 1 号 p. 1_35-1_39
都市近郊の閉鎖性流域である千葉県、印旛沼は高度経済成長期に大きくその姿を変えた。人間生活に多くの利便性をもたらしたが、水質汚染は深刻になった。そこで、湖沼水質保全計画により1986年から対策が試みられたが、改善には至らなかった。そのため、2001年に印旛沼流域水循環健全化会議が設立され、トランスディシプリナリティーに基づく様々な実践が行われてきた。その活動を通じて水質を改善するためには流域をシステムと捉え、全体をよくする中で水質も改善するという考え方が生まれてきた。2019年秋季の3回の風水害、2020年以降のコロナ禍は印旛沼流域における活動を停滞させたが、印旛沼流域の未来を再考する機会となった。コロナ後の印旛沼流域における実践は20世紀型の科学技術の成果に基づき、21世紀型のオルタナティブ・サイエンスの登場を促す営みとなるはずである。