学術の動向
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「水」と「水循環」の研究最前線 ─ 21世紀の多分野協創研究にむけて─
地下水ガバナンスの動向と日本の課題に関する一考察
千葉 知世
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2022 年 27 巻 1 号 p. 1_45-1_49

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抄録

 地下水の不可視・低速・分散的な特徴は、その管理を困難にする。従来の政府による規制を中心とする地下水管理が十分に奏功しないケースが観察される中、多様なアクターによる水平的・垂直的な協働、および地下水とその関連領域における法制度的・政策的対応の束によって、地下水を持続的に保全管理していくプロセスである「地下水ガバナンス」が国内外で耳目を集めている。地下水ガバナンスの発展段階は各国・各地域によって様々であり、日本国内でも各地域の状態は多様である。日本では、一般的には地盤沈下等の古典的な地下水障害は沈静化しつつあるが、一方で、気候変動による地下水・地下環境への影響など科学的不確実性の高い課題が現出しつつある。グローバルかつ長期的で不確実な課題を、地域の政策に落とし込んで予防的に対応していくための地下水ガバナンスの構築、そのための科学コミュニケーションの推進が重要性を増している。

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